<あらすじ>
内戦が激化する故郷シリアを逃れた青年カーリドは、生き別れた妹を探して、偶然にも北欧フィンランドの首都ヘルシンキに流れつく。空爆で全てを失くした今、彼の唯一の望みは妹を見つけだすこと。ヨーロッパを悩ます難民危機のあおりか、この街でも差別や暴力にさらされるカーリドだったが、レストランオーナーのヴィクストロムは彼に救いの手をさしのべ、自身のレストランへカーリドを雇い入れる。そんなヴィクストロムもまた、行きづまった過去を捨て、人生をやり直そうとしていたが・・
シェルワン・ハジ、サカリ・クオスマネン、ヴァルプ、イルッカ・コイヴラ、
ヤンネ・ヒューティアイネン、ヌップ・コイブ、カイヤ・パカリネン、
サイモン・フセイン・アルバズーン、カティ・オウティネン、
マリヤ・ヤルヴェンヘルミ、ニロズ・ハジ 他 出演
アキ・カウリスマキ 監督作
<感想>
もしも自分が難民になったら・・・
そう想像したら、ぞわぞわとしてきた。
人間として地球で生きている限り決して他人事じゃないし
あるいは明日、難民だという人に出逢うかもしれないのだから。
「こんな素敵な荷物を運べたんだ、お金なんかいらない」
グっとくる、この世知辛い世の中で
何の得もないけれど、目の前で困っている人への親切。
逃走を決意したあの瞬間に
目と目で何も言わずドアを開けてくれたり
なんだかんだと出逢った彼を匿い一緒に働き一緒に食べ
店内で隠れる場所を探したり・・そんな小さな親切が重なり
どこか温かい空気が流れていたから
ふと、楽観してしまった、そう笑っていれば、きっと・・って。
カーリドは笑っていた、あの最悪だった日も。
でも、あのラストシーン・・
カーリドの笑顔とワンコのコイスティネンの笑顔が
優しいけれど、どこか切ないのは
白いシャツから垣間見える赤い血と
爆撃されていても、そこは安全だから帰れという無情と
別の国で生まれたというだけで理不尽な暴力にあう緊張が
どこまでも追いかけてくるようで、あの笑顔が失われないかと
ハラハラしてしまうから・・・
国とはいったいなんだろう、安心して命たちが生きていけないのなら
なんのために存在しているのかわからない。
終始、可笑しみに溢れクスクス笑いながらも、
時折ヒヤリと考えさせられる。
音楽人たちと音が最高に渋カッコいい。
ワンコが存在そのものだけで泣けるほど愛しい。
クオスマネンさんとカティ姐さんの嬉しいツーショット。
どこもかしこも何もかもたまらなくなる映画だった。
『ル・アーヴルの靴みがき』を観た時に生まれたあの時の思い・・
もう一度かみしめた冬の日。
しかし、あのお寿司は・・!(笑) けど、ちょっと食べてみたい・・いや、無理か(笑)
*2017年12月の或る日、映画館で。
|