やっぱり映画は映画館だよね。
*星マークが、:感動!、:好き、:悪くはないけど、:なんで観たのか、:時間とお金返して

 「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」  2017年 アメリカ

<あらすじ>
レイア将軍率いるレジスタンスはファースト・オーダー艦隊と壮絶な宇宙戦を繰り広げていた。一方レイは 伝説のジェダイ、ルーク・スカイウォーカーに逢いに行き思いをこめてライトセーバーを差し出すが・・・
マーク・ハミル、キャリー・フィッシャー、アダム・ドライバー、
デイジー・リドリー、ジョン・ボイエガ、オスカー・アイザック、
アンディ・サーキス、ルピタ・ニョンゴ、ドーナル・グリーソン、
アンソニー・ダニエルズ、グェンドリン・クリスティー、
ケリー・マリー・トラン、ローラ・ダーン、フランク・オズ、
ベニチオ・デル・トロ、ティモシー・ローズ、ジミー・ヴィー、
ヨーナス・スオタモ、ビリー・ラード、マイク・クイン、
ゴー・タイン・バン、ワーウィック・デイヴィス 他 出演
ライアン・ジョンソン 監督作



<感想>
ライトセーバーを捨てたくせに
ジェダイの聖典を燃やすのはためらっていたルーク。
その姿を観てヨーダがガツンと燃やしてしまった瞬間、
フォースの覚醒』を観ていた時に感じていたことが現実になって、
一気にテンションあがったまま走り抜けたのです。
正直、シリーズをいつも失礼な態度で観ていたアタシみたいんなものが
ひさびさに映画を観て心躍ってしまったのです。
大切なことは伝説ではなく目の前にある、
今、そのものだよというのを映像で観せてくれたのだから。

特に新しく登場したローズがとても好感がある存在。
なんていうか、本当に何者でもない、ごく普通な雰囲気の彼女が
本当の意味で勝つということはどういうことなのかを
命を懸けて体現していてローズのような人が登場してくれたおかげで
遠い惑星の伝説たちの上から目線の話ではなくて、
目の前の共感できる人たちの話になったと思うし
そのベタだけれど、破壊や奪い合いとは真逆のところで
愛する人を守るということを躊躇なく選べることが素敵だったし
そのことは美しい夕陽の中で遠くにむかって命を懸けて散っていった
ルークの後ろ姿とも重なる。伝説は超えて捨て去るためにある。
そこにしがみつくためではなく。

何よりひとつひとつの場面がとても美しかった。
特に戦いの場面で赤い砂が舞うような場面が心に残っていて
もう一度観たいくらいだし、レイの鏡の場面も印象的だったし
個人的にとても気に入っていたポーの出番が多かったのもウレシイ。
ちょっと無鉄砲というか猪突猛進なところあるけど好き。
というかアイザックさんの雰囲気が好きなんだよなぁ
ポーとBB-8との友情はたまらんですね。
あぁ、いいなBB-8と一緒に暮らしたい(笑)
冒頭で、抑えがきかなくて最後は自分の頭をぶっこんでるとこか最高です。

それから、ポーグ!チューバッカが焼き鳥食べよとしているのを
うるんだ眼差しでみつめているんだもん、困ったよね(笑)
フィンも好きだし、やはり、前作からの新しいメンバーたちとても好き。
そうそう、デルトロ兄さんがある場面で登場するんですけど
全然前情報知らずに観に行ったので、まさかデルトロ兄さんだとは思わず
なんだよ、デルトロ風にいかにもな演技しやがってって思っていたら
ご本人だったという・・(笑)いや、もう、まさに
絵に描いたようなデルトロ風味な役柄で勝手に地味にウケました(笑)

カイロ・レンのダークサイドに堕ちきれないような堕ちたような
どちらなの?っていう感じもいいですね。
というか、 先日『パターソン』をようやく観ることが出来たのもあって
本当に今月つい最近観てきたばかりだったので
どうしても、カイロ・レンがパターソンに観えてしまう瞬間が時折あって
もしかして、ポエムノート持ってんじゃないの?って
何度も何度も勘ぐってしまいました(笑)
そんな彼とレイとの孤独というのか、 だって、確かに
カイロ・レンがあぁなっちゃうのも わからないでもないというかね。
対してレイはもしかしたら自分は特別だったのかもしれないという希望が
崩れ去りまるでゴミのように捨てられていた命だったと知る。
そんなふたりの孤独な魂のつながりみたいなものにも惹かれてしまった。

たぶん、スピン・オフの『ローグ・ワン』があったからこそ
尚更、この映画に感じ入れたのかもしれない。
いわゆるエリート的な特別な才能や家系に恵まれた者ではなく
何者でもない人たちが自分の信念で突き進むところ。
誰だって、今を目の前を大切に強く必死に生きれば
行動できるのだということ、どんな命も誰でもが
かけがえのない輝きがある特別な存在なのだと
そんな風に思わせてくれるこの強く優しい物語に惚れてしまいました。
しかしまさか、ここまで熱い気持ちになるなんて。
これだから映画って怖い(笑)

最後に。
キャリー・フィッシャーさん、永遠のレイア姫。
素敵でした・・。あらためて、合掌。



*2017年12月の或る日、映画館で。




 「希望のかなた」  2017年 フィンランド、ドイツ

<あらすじ>
内戦が激化する故郷シリアを逃れた青年カーリドは、生き別れた妹を探して、偶然にも北欧フィンランドの首都ヘルシンキに流れつく。空爆で全てを失くした今、彼の唯一の望みは妹を見つけだすこと。ヨーロッパを悩ます難民危機のあおりか、この街でも差別や暴力にさらされるカーリドだったが、レストランオーナーのヴィクストロムは彼に救いの手をさしのべ、自身のレストランへカーリドを雇い入れる。そんなヴィクストロムもまた、行きづまった過去を捨て、人生をやり直そうとしていたが・・
シェルワン・ハジ、サカリ・クオスマネン、ヴァルプ、イルッカ・コイヴラ、
ヤンネ・ヒューティアイネン、ヌップ・コイブ、カイヤ・パカリネン、
サイモン・フセイン・アルバズーン、カティ・オウティネン、
マリヤ・ヤルヴェンヘルミ、ニロズ・ハジ 他 出演
アキ・カウリスマキ 監督作



<感想>
もしも自分が難民になったら・・・
そう想像したら、ぞわぞわとしてきた。
人間として地球で生きている限り決して他人事じゃないし
あるいは明日、難民だという人に出逢うかもしれないのだから。

「こんな素敵な荷物を運べたんだ、お金なんかいらない」

グっとくる、この世知辛い世の中で
何の得もないけれど、目の前で困っている人への親切。
逃走を決意したあの瞬間に
目と目で何も言わずドアを開けてくれたり
なんだかんだと出逢った彼を匿い一緒に働き一緒に食べ
店内で隠れる場所を探したり・・そんな小さな親切が重なり
どこか温かい空気が流れていたから
ふと、楽観してしまった、そう笑っていれば、きっと・・って。

カーリドは笑っていた、あの最悪だった日も。
でも、あのラストシーン・・
カーリドの笑顔とワンコのコイスティネンの笑顔が
優しいけれど、どこか切ないのは
白いシャツから垣間見える赤い血と
爆撃されていても、そこは安全だから帰れという無情と
別の国で生まれたというだけで理不尽な暴力にあう緊張が
どこまでも追いかけてくるようで、あの笑顔が失われないかと
ハラハラしてしまうから・・・
国とはいったいなんだろう、安心して命たちが生きていけないのなら
なんのために存在しているのかわからない。

終始、可笑しみに溢れクスクス笑いながらも、
時折ヒヤリと考えさせられる。
音楽人たちと音が最高に渋カッコいい。
ワンコが存在そのものだけで泣けるほど愛しい。
クオスマネンさんとカティ姐さんの嬉しいツーショット。
どこもかしこも何もかもたまらなくなる映画だった。
『ル・アーヴルの靴みがき』を観た時に生まれたあの時の思い・・
もう一度かみしめた冬の日。

しかし、あのお寿司は・・!(笑)
けど、ちょっと食べてみたい・・いや、無理か(笑)



*2017年12月の或る日、映画館で。




 「探偵はBARにいる3」  2017年 日本

<あらすじ>
札幌にあるアジア最北の歓楽街・ススキノ。この街の裏も表も知り尽くす探偵のもとに相棒である高田が人探しの依頼を持ち込んでくる。失踪した女子大生・麗子について調査を開始した探偵たちはモデル事務所の謎めいたオーナー、マリに翻弄されるうちにいつしか大きな事件に巻き込まれていく・・
大泉洋、松田龍平、北川景子、リリー・フランキー、
前田敦子、鈴木砂羽、志尊淳、松重豊、田口トモロヲ、
マギー、安藤玉恵、正名僕蔵、野間口徹、坂田聡、
土平ドンペイ、斎藤歩、前原滉、、桝田徳寿、天山広吉、
片桐竜次、今村美乃、栗山英樹 他 出演
吉田照幸 監督作



<感想>
シリーズ三作目。
ひさしぶりに探偵と高田ちゃんに再会出来てうれしい。
相変わらずこの二人のやりとりの温度差に
クスリと笑わせてもらいながら昭和風味全開の
ほんのり苦みのあるハードボイルド人情コメディ的なとこがいい感じ。
というか、この三作目が一番落ち着いていて
いい意味でクセがなくて観やすい、こなれた感じ。
ただあのスローのアクションはちょっと白けてしまった。
重量感を感じさせたかったのかもだけれど
流れでちゃちゃとアクションになるからリアル感があるのだから
あそこの場面は最初の一発目ならスローでもいいけれど
その後は普通の動きかむしろ少し早回しにしてほしい。
それにしても、船に縛られている大泉さん、ほんとに寒そう(泣笑)
もうそういう拷問やめようよと思いながらも、うっかり期待しちゃう・・
四作めはどんな仕打ちが待っているのかしら・・(笑)

マリが人生に何かを見つけたこと、その命をかけてまで
やりかたかったことの哀しさを全身で受けとめる探偵の
切ない背中を雪が包み込むように広がっているような
この報われない感のあるラストがこの映画らしい。
もちろん、エンドロール後の彼是も健在。
高田ちゃん・・ちゃっかりしている!!(笑)
でも、彼がある場面でサンドバックで鍛えていた時、
何かの覚悟のようなものを全身で感じてグっときてしまった。
やはり、ふたりは離れられない。
勝手に期待してます、また探偵と高田ちゃんに再会できることを。

それにしてもクリクリ!懐かしいなあ。最近野球観ていないのでねぇ。
爽やかだよね、クリクリ。ってか、峰子さんの扱いを
もうちょっと配慮してほしいけどね(苦笑)



*2017年12月の或る日、映画館で。




 「パターソン」  2016年 アメリカ

<あらすじ>
ニュージャージー州パターソンに住むバス運転手のパターソン。彼の1日は朝、隣に眠る妻ローラにキスをして始まる。いつものように仕事に向かい、乗務をこなす中で、心に芽生える詩を秘密のノートに書きとめていた・・
アダム・ドライバー、ゴルシフテ・ファラハニ、ネリー、永瀬正敏、
バリー・シャバカ・ヘンリー、クリフ・スミス、
チャステン・ハーモン、ウィリアム・ジャクソン・ハーパー 他 出演
ジム・ジャームッシュ 監督作



<感想>
双子の意味はなんだったのだろう。
月曜日の朝、ローラが双子ができた夢をパターソンに語り
出逢う詩人の少女が双子だったけれど・・
ふと、軍人姿のパターソンの写真のことを思う。退役軍人らしいけれど、
もしかしたら、双子の軍人の兄か弟がいたのだろうか。 色々考えがめぐる。
白黒にとりつかれている愛すべき妻ローラの作るアートなカップケーキ。
ランチボックスを開けた時にミカンみたいなオレンジに落書きしてあったり
毎日違う模様のカップケーキがはいっていて
それをパターソンが頬張った時のなんともいえない楽しそうな表情と
キャベツとチーズのパイを大量の水で流し込む困惑気味の表情。
パターソンの日々、ローラと詩とマーヴィンと毎日愚痴っている同僚と
小さなバーでマスターと常連客の中で飲む1杯のお酒と
バスの乗客の何気ない会話と道に座っている人にあげるお金と。

「映画と食事をありがとう」

パターソンがローラにそう言った時、なんとなく涙があふれそうになる。
そして、ちょっとマッティ・ペロンパーさんを思い出した。
そんなセリフ、カウリスマキ映画のマッティとカティ姐さんの間に
ありそうな、なかったような・・けど、似合うよね、
ささやかでクールな優しさあふれるセリフ。
そういえば、マーヴィン、いつもバーの前でつながれているんだけれど
その前にワンコが盗まれるから気をつけろと言ってくれる場面があるから
夜、バーの前でつながれているたびにハラハラしてしまう。
これはつまり、ジャームッシュの観客に対するイタズラなのでせうか(笑)
傾いているポストを毎回直すパターソンの姿を窓から眺めていたり
いつも一緒に出掛ける夜に置いて行かれて詩のノートに八つ当たりしちゃう
マーヴィンのイタズラと同じように観客に、いつかこの愛らしいマーヴィンが
奪われてしまうのではないのかとハラハラドキドキしながら見つめさせる
ジャームッシュ監督の茶目っ気のような気がしてしまった。
(今となってはガレージから無事に出してもらえたのか心配です・謎笑)

「レインコートを着てシャワーを浴びているようなもの」

バスの運転手だと答えたパターソンに詩的だね、という謎の日本人詩人。
重ねてきた詩の言葉たちがバラバラになり空っぽになったパターソンに
新しいノートをくれた詩人は「A-ha!」と言って去っていく。
そういえば愛する人に毎回フラれ絶望に酔う自殺願望の青年も言っていたね、
毎日が新しい日なのだと。
そうだよね、どんな人も、どんなことも新しい毎日で
すべては見つめ方ひとつで、何もかもが詩になるのだから。
豊かな毎日、何が豊かということなのか
そのことを自然に知っていて、そうやって生きていける日々。
パターソンの詩のような新しい毎日が柔らかく輝いている。



*2017年12月の或る日、映画館で。




 「ブレードランナー 2049」  2017年 アメリカ

<あらすじ>
2049年、貧困と病気が蔓延するカリフォルニア。人間と見分けのつかないレプリカントが労働力として製造され、人間社会と危うい共存関係を保っていた。危険なレプリカントを取り締まる捜査官はブレードランナーと呼ばれ、2つの社会の均衡と秩序を守っていた。LA市警のブレードランナー“K”はある事件の捜査中にレプリカント開発に力を注ぐウォレス社の巨大な陰謀を知ると共にその闇を暴く鍵となる男にたどり着く。彼は、かつて優秀なブレードランナーとして活躍していたが、ある女性レプリカントと共に忽然と姿を消し30年間行方不明になっていた男、デッカードだった。そして・・・
ライアン・ゴズリング、ハリソン・フォード、
アナ・デ・アルマス、シルヴィア・フークス、ロビン・ライト、
レニー・ジェームズ、カーラ・ジュリ、ショーン・ヤング、
ローレン・ペタ、デイヴ・バウティスタ、ジャレッド・レトー、
エドワード・ジェームズ・オルモス、トーマス・レマルキス 他 出演
ドゥニ・ヴィルヌーヴ 監督作



<感想>
誰ともつながることが出来ない。
製造された命、ただ仕事をこなしていくだけだったのに
記憶が本当だったら・・もしかしたらそうだった・・と
誰もが思いたい本物の実感。
どこにも持って行き場のない一方通行の愛は
あまりにも寂しくて、あまりにも切なくて・・
「どうして、君にとっての俺はなんだ?」との問いかけに
優しく微笑む彼は、せめてもの名前でジョーと呼ばれた。
記憶、雪、木馬、黄色い小さな花、涙の意味・・

35年ぶりの続編と聞いてから、
楽しみ半分、不安半分だったけれど
蓋を開けてみれば、安易な続編ではなくて
思いのほか、どっぷりなSFでもなくて、
前作よりもさらに感情に寄り添うものになっていた。

雪の空を眺めながら静かに封印された命そのもの。
その悲しさと繊細さの美しく冷たい静寂の少し前
信じたかった誰かのためにした彼の最後の行動は
冒頭のレプリカントのサッパーが彼に放った
「お前は奇跡を観ていないからだ」の言葉に巻き戻される。
きっと、Kが奇跡だったのだと思う。
人間もどきと言われた彼の日々。知ってしまった悲しさ。
それでも、そこから生まれたホンモノの気持ち。
たとえ雪の中に消えてしまっても
観たよ、Kが自分の意志で生きたその瞬間を。



*2017年10月の或る日、映画館で。




 「僕のワンダフル・ライフ」  2017年 アメリカ

<あらすじ>
少年イーサンに命を救われたゴールデンレトリバーの子犬ベイリーは、イーサンを慕い、彼と固い絆を結んでいく。最愛の人との日々を過ごすベイリーだったが、人間よりも犬の寿命は短く、やがて別れの時がやってくる。しかしベイリーはイーサンに会いたい一心で生まれ変わり、3度の転生を経てついに再会。そして、自分の大切な使命に気付く・・
トリップ(ベイリー)、シャドウ(エリー)、マイロ(コーギー)、
ボルト(バディ)、ジョシュ・ギャッド(ベイリー、エリー、
コーギー、バディの声・日本語吹き替え:高木渉)
デニス・クエイド、K.J.アパ、ブライス・ゲイサー、ペギー・リプトン、
ブリット・ロバートソン、ジョン・オーティス、
カービー・ハウエル=バプティスト、ジュリエット・ライランス、
ルーク・カービー、マイケル・ボフシェヴァー、ガブリエル・ローズ 他 出演
ラッセ・ハルストレム 監督作



<感想>
犬の映画というよりは、人間の妄想が炸裂しているファンタジー。
でも、さすがの我らがハルストレム監督、だって、まず、すんごく
シビアになりそうな冒頭のあっという間の一生だった子犬のコや
最後に生まれ変わった子のつながれっぱなしのただ過ぎていく
なんのための生なのかという立場になってしまっている状態のワンコとか
警察犬として人間の道具として勝手に働かされているワンコとか
そういう過酷なベイリーの生まれ変わりたちを湿っぽくならずに観せつつも
やんわりとズキっと人間がワンコたちに無理矢理強いてきた残酷なことに
それとなく気が付かせてくれながらも、暗くならない。
シニカルなのに温かくて、あぁ、ハルストレム監督だな、と
思わせるものが随所にあり、ちょっとうれしかった。

ベイリーは気が付かせてくれる。毎日は かけがえのない日々で
懸命に健気に元気に生きるベイリーがどれだけ輝いていたか、
その輝きは家族たちにどれだけ笑顔な日々をくれたのか
あれだけの牙を持ちつつも誰にも牙をむけず、
ひたすら人を信じて体いっぱいで魂いっぱいで遊ぶ。
その存在、ただ一緒に生きてくれているだけで
どれだけ素晴らしいことなのか、生命の輝き、地球は誰のものでもない
生きて、生きたい命たちが自由に生きまくればいい場所。
ベイリーが憶えたイーサンを喜ばせる尻尾をつかんでくるくる回ることを
孤独な警官カルロスの寝室でやってみせたエリー(ベイリー)の仕草に
思わず落涙・・というか、ずっとウルウルですよ、
もうこの映画、全力で泣かせにきていて困る(笑)

「ボスドッグ!ベイリー、ベイリー、ベイリー」
健気すぎて、どうしていいのか切なくて、愛しい。
今、一緒に生きてくれている命たちを大切にしてあげてください。
あっという間の一生なのです、打算は捨てて、カッコなんてつけないで
笑って、愉しんで、後悔のないように今を今そのものを生きて・・
そんな思いでいっぱいになりました。

追伸・・
あのコインは洗ったのでせうか・・匂い強そうです(謎笑)



*2017年10月の或る日、映画館で。




 「ドリーム」  2016年 アメリカ

<あらすじ>
1962年に米国人として初めて地球周回軌道を飛行した宇宙飛行士ジョン・グレンの功績を影で支えた、NASAの3人の黒人系女性スタッフ、キャサリン・ジョンソン、ドロシー・ボーン、メアリー・ジャクソンの知られざる物語を描いたドラマ。ソ連とアメリカの宇宙開発競争が繰り広げられていた61年、米バージニア州ハンプトンにあるNASAのラングレー研究所に、ロケットの打ち上げに必要不可欠な計算を行う黒人女性グループがいた。なかでも天才的な数学の才能をもつキャサリンは、宇宙特別研究本部の計算係に抜てきされるが、白人男性ばかりのオフィス環境は、キャサリンにとって決して心地よいものではなかった。一方、ドロシーとメアリーもそれぞれ、黒人であるというだけで理不尽な境遇に立たされる・・
タラジ・P・ヘンソン、オクタヴィア・スペンサー、ジャネール・モネイ、
ケビン・コスナー、キルステン・ダンスト、ジム・パーソンズ、
マハーシャラ・アリ、キンバリー・クイン、
グレン・パウエル、オルディス・ホッジ 他 出演
セオドア・メルフィ 監督作



<感想>
本当はもっとひどいこと、つらいことたくさんあったはずだけれど
そういう苦労や憤りや偏見、不平等などをまるで音楽を聴くがごとく
カラリと描いてくれた映画だったし、観ているこちら側が
着地してほしいところにちゃんと着地しすぎているから、とても観やすい。
この観やすさを実話なのだからもう少し丁寧にと思う反面
実話だからこそあえてシビアで目を背けるような重い内容にせずに
軽く観やすくしたほうがいいのだとも思ったりして
そんな気持ちが行ったり来たりしていた矢先での、あの場面
キャサリンが気持ちを爆発させるところで彼女と一緒に泣いてしまった。

思えば人種差別にかかわらずこの問題って今でもこの日本でも普通にあるよね
職場の中で、家庭の中で、どこでもかしこでも人間のいるところ
様々なあらゆる差別がこの世の中にはわんさかと存在していて
人生の中で必ずアタシたちはどちらかになり、知らず知らずのうちに
誰かを傷つけたり、誰かに傷つけられたりしている。
特にマハーシャラ・アリさん演じるジムがキャサリンに思わず言ってしまう
「女なのに」という偏見。彼のような温かで素敵な人ですら
そういうことをポロリと言ってしまう。それはもう、
悪気が全くないということがすでに大問題で、
でも、そのことに気が付いてやり直させてくれと言う人だったからこそ
キャサリンと人生を一緒に歩んでいくけれど、その偏見って
今でも普通にあるもの、必ず言うでしょ「〇〇なのに」って。

でもこの映画が何よりも 素敵だったのは
願いはただひとつということを貫いていたからだと思う。
敵味方になりたいわけでもなく、勝ちたいわけでもなく
相手を下したいわけでもなく、とにかく公平無私でいてください、と。
身を粉にして働いていることに対して、学びたいことに対して、
やっているすべてのことに対して主観や差別をするのではなく
公平にしてほしい、ただそれだけの普通の願いを描いていて清々しかった。

ただそれでも、ちょっとだけ思う。
キャサリンがマーキュリー計画のスペースタスクチームの一員に選ばれて
そこに行った時に彼女のことを掃除係の人だと思って
ゴミを渡す場面があるけれどそれってつまり
人種差別と同時に掃除の仕事そのものをバカにしている
描写でもあるよねとも思ったりしてしまうわけで。
特にハリウッド映画を観ていると掃除やウェイター、ウェイトレスや
駐車係の仕事をとても下にみて昔から描かれているけど、
それって個人的にはとても違和感があって。差別の問題を描きながら
職業差別するの?ってちょいと思ってしまうのです。

とはいえ、とにかく、なんといっても
キャサリン、ドロシー、メアリーの三人、めっちゃカッコよかったし
音楽も最高だった。今年は音楽がいい映画がいっぱいでお財布困る
これまたサントラがほしくなっちゃう、どうしようか(笑)



*2017年10月の或る日、映画館で。




 「アンダーグラウンド」  1995年 フランス、ドイツ、ハンガリー

<あらすじ>
ナチス・ドイツ占領下のセルビア。武器商人のマルコは地下で仲間をかくまい、武器を製造して生活する。 やがて、戦争は集結するがマルコは仲間に戦争が終わったことを知らせず、地下での生活は50年にわたって続いていく・・
ミキ・マノイロヴィッチ、ラザル・リストフスキー、
ミリャナ・ヤコヴィッチ、エルンスト・ストッツナー、
スラヴコ・スティマチ、スルジャン・トドロヴィッチ 他 出演
エミール・クストリッツァ 監督作



<感想>
「昔あるところに国があった」

映画が終わってからも頭の中でぐるぐる何かが回り続けていた。
まるでそれは狂気のサーカスのようで、
終わりのない何かがまとわりついているみたいで。
恐ろしさを音楽とともに笑っているような
そんなこの映画のリズムに呑み込まれたまま浮き上がれない。

爆撃の中、動物たちが血だらけで死んでいく。
ひとりぼっちになったチンパンジーのソニはイヴァンと一緒。
空を泳ぐ花嫁は井戸に身を投げ、溺死した花婿は彼女にやっと会える。
絶望した教会の鐘の音。それは首つりの音。
炎の車椅子が回り、機関銃と音楽と絶望が血を駆け巡る。
戦争が戦争を呼び戦争をしている間になにもかも灰になり
なにもかもが血の海になる。
地獄の狂乱は誰が招いたこと、人間がやってきたこと。

「苦痛と悲しみと喜びなしでは子供たちには語れない。
"昔あるところに国があった"、と」

ラストシーン、 マルコ、クロ、ナタリア、イヴァン、ヨヴァン・・
皆が愉しんでいる哀しい宴にソニはいない。
ふと、その宴を眺めていたら月を太陽と思っていたヨヴァンが
本当の太陽をみた場面を思い出して
涙があふれてきて止まらなくなってしまった。

1941年から50年に渡る暗黒のユーゴスラビアのこと。
その狂気の沙汰を忘れないように刻印しておくかのように。
そして、思う。映画を作って、映画を観る。
その行為そのものが、少しだけ恐ろしい気がしてくる。
でも、観ずにいられないのはどうしてなのでしょう。



*2017年10月の或る日、映画館で。




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