『ザ・トレンチ 塹壕』(原題:The Trench) 1999年、イギリス
監督:ウィリアム・ボイド
撮影:トニー・ピアース=ロバーツ
出演:ポール・ニコルズ、ダニエル・クレイグ、ジュリアン・リンド=タット、ダニー・ダイア、
   ジェームズ・ダーシー、キリアン・マーフィー、ベン・ウィショー 他
物語:1916年の真夏、6月29日。フランス北部のソンムで、イギリス軍の新兵たちは
   地下に掘り巡らされた塹壕の中で攻撃命令を待っていた。ビリー、デル、ダベントリ−、
   そしてビリーの兄エディーらは全員が志願兵だったが、長引く戦いでかなり疲弊、憔悴していた・・
   第1次世界大戦に起きた、20世紀最大の愚行と呼ばれる“ソンムの戦い”。
   名脚本家ウィリアム・ボイドが悲劇の前夜48時間を前線の兵士たちの視点で描いた重厚なヒューマン・ドラマ。

(映画☆☆☆☆、ダニクレ度☆☆☆☆☆)

あまりにもリアルで哀しく辛い映画だった。ダニクレはウィンター軍曹役。若き兵士たちに厳しくて一見、鬼軍曹的な感じではあるのだけれど心根は優しい人なんだよね。中尉の前では自分は兵士であり、命令には従います、酒も断酒していますと自分を律しているものの、家族はいるのかという質問に妻と子供3人と言い大切にしている写真を見せるんですよね。それで、その時の空気感がなんというか複雑で切ない感じが漂うんですよ。あぁ、そうか、そうなのか・・と。きっと、他の選択肢がなくて、ここに来たけれど、本当は彼もこんな場所は不安で怖いんだと思う。

ダニクレはある場面で瓶からいちごジャムをガツガツ食べているんですよね。そして、それをポール・ニコルズさん演じる若き兵士ビリーにウチの妻のいちごジャムは絶品だ、いちご好きだろ?ってすすめるけれど、いちごジャムは歯につまって苦手で・・って断られて、またひとりで食べるんだけれど、その場面がたまらなく哀しくて泣けてきて、泣けてきて。なんだかマジで泣けてきて・・・

朝の陽ざしとともに攻撃を?皆新兵で無理ですって言うけれど、絶望の命令はそのまま実行される。戦争にドラマチックな奇跡などなにもない。ただ無駄死にしていくだけ。悲惨すぎて辛い。まだみんな、子供だ。

というかこれメモしていて気が付いたのだけれど、ダニクレはウィンター軍曹を演じた後『Some Voices』の天使のような青年レイを演じたのか・・・ふり幅激しすぎて、この映画ではウィンター軍曹だったし、『Some Voices』ではレイそのものだった。今更ながら、彼の演技力に脱帽してしまった。。これからいちごジャムを食べるたびにあの瓶から食べるウィンター軍曹を思い出して切なくなるのだと思う。どこまでも誠実な真摯な映画だった。戦争、もう、この地球上から、この言葉そのものがなくなればいいのに。。

追伸・・
ここでもベン・ウィショーさんと共演。彼は優しそうな若き兵士役だった。多いなあ、共演作。うれしい。

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