『Some Voices』 2000年、イギリス
監督:サイモン・セラン・ジョーンズ
脚本:ジョー・ペンホール
出演:ダニエル・クレイグ、ケリー・マクドナルド、デビッド・モリッシー
   ジュリー・グレアム、ピーター・マクドナルド、エドワード・チューダー=ポール 他
物語:統合失調症のレイが病院を退院した後、献身的な兄ピートが彼の面倒を見ていた。
   しかし、レイがスコットランド人のローラと関係を持ち始めると、彼は薬を無視するようになり・・
   脚本のジョー・ペンホールが自身の舞台劇を映画化。
(映画☆☆☆☆☆、ダニクレ度☆☆☆☆☆)

先日、ダニクレボンドのドキュメント『ジェームズ・ボンドとして』を観た時に彼の出演作の映像が流れてきて、その中で赤いトマトを枕にしているような映像が気になり検索してみたら、この映画に出逢いました。日本では未公開、未ソフト化らしいんですけど、え、どうして?っていうくらい素敵な映画だった。というか、そもそも、イギリス版やアメリカ版のDVDやBlu-rayもあまり出回っていなくて、パッケージのダニクレの名前表示が間違っていて不安だったけれど(CraigなのにGraigってなっている(-_-;)フランス語版のものを購入し、ひさしぶりにリージョンフリーにしてくれるミニDVDプレイヤーPRIMAくんを発動させて観ました。

ダニクレが演じてくれたレイは総合失調症でタイトルにもあるように声が聴こえてくるんですよね。この病気の症状のひとつの幻聴がレイにありました。でも、クスリを飲むことでなんとかおさえることが出来るのだけれど、そのクスリを飲むのがとてもツライみたいだった。たぶん、副反応が激しいんだと思う。お兄ちゃんに言われるとシブシブ飲むんだけれど、ある日、出逢ったローラに一目惚れなのかな、大好きになる。ローラは妊娠しているんだけれど、そのこともすべてひっくるめて好きになっているみたいで、お腹に優しく耳をかたむけるんだよね。で、彼女と一緒にいる時にはクスリを飲まなくなるんだよ。そして・・って感じなのだけれど、とにかく、なんだか、大切なものがたくさん映像に溢れていて、ダニクレが繊細でイノセントで、泣けてきてしかたがなかった。

レイとローラが互いに瞼にキスするところなんか、泣きそうになる。ふたりが小旅行に行ったりするんだけれど、その列車の中、トンネルになって暗くなった時にレイが無邪気にライターをつけてローラがロウソクの火を消すように、ふっってやる場面、ここ、すごく小さな宝石みたいな・・なんて言ったらいいの、泣きそうになったの。他にもなんてことない場面だけれど、そういうレイや彼の周りにあるすべてのことを壊したくない、どうか優しく、どうか、お願いって祈る気持ちになる映像やダニクレの繊細な演技が目白押しで観続けてしまった。

それゆえに最後の自殺未遂の場面では胸が苦しくなる。でも、字幕なくてわからなかったけれど、これ、元々は舞台劇だったらしくて、もしもこのままの内容だったら、舞台だと、案外、ライターの火をつけるところなんかは笑い・・楽しい笑いではなくて、行動に対しての反応のような形で起きる笑いにもっていきそうな場面だなとか思ったり。もちろん観ていないので実際はどうだったのかわからないけれど、面白いもので生の劇であればるほど、作り物という形で一線置いて観るのに、生じゃない映像の方がリアルというか、映画だと演じての息吹のようなものが身近に感じるので(ダニクレだったからというのもあるかも。彼は本当に素晴らしいです)痛々しくて切なくて、自分を傷つけるまで追い詰められたレイと彼を救いたい兄のピートの切実さに祈りたくなる場面になっていて沁みた。

その後のローラとの別れ・・ローラは会いに来てくれるのだけれど、故郷で子供を産むからもう逢えない的な感じで。レイがローラみたいな人にはもう逢えない(逢ったことがない)って言うんだよね、たぶん。なんか、切なかったな・・ 兄弟愛は続くみたいで、ふたりで玉ねぎやらキノコなんかを混ぜた美味しそうなもん作っていて、そこは安心したけれど、レイはローラと一緒にいたかったんだと思う。再び病院生活。この先どうなるのか見つめていたくなる。どうか幸せになってと願いながら。

日本語字幕がないのに、ここまで感じ入るのだから字幕をつけてくれたら、たぶん、毎日観てしまいそう。今からでも発売してほしいよ、マジで。



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