<あらすじ>
1960年代初頭の台北。建国高校昼間部の受験に失敗して夜間部に通う小四(シャオスー)は不良グループ小公園に属する王茂(ワンマオ)や飛機(フェイジー)らといつもつるんでいた。 小四はある日、怪我をした小明(シャオミン)という少女と保健室で知り合う。彼女は小公園のボス、ハニーの女でハニーは対立するグループ217のボスと小明を奪いあい、相手を殺して姿を消していた。ハニーの不在で統制力を失った小公園は、今では中山堂を管理する父親の権力を笠に着た滑頭(ホアトウ)が幅を利かせている。
小明への淡い恋心を抱く小四だったが、ハニーが突然戻ってきたことをきっかけにグループ同士の対立は激しさを増し小四たちを巻き込んでいき・・
チャン・チェン、リサ・ヤン、ワン・チーザン、クー・ユールン、タン・チーガン、
ジョウ・ホェイクオ、リン・ホンミン、チャン・クオチュー、エイレン・ジン、
ワン・ジュエン、チャン・ハン、チアン・ショウチョン、ライ・ファンユン、
チャン・ホンユー、ワン・ゾンチェン、タン・シャオツイ、ヤン・シュンチン、
ニー・シュウジュン、ワン・ウェイミン、シュー・ミン、シュー・ミンヤン 他 出演
エドワード・ヤン 監督作
<感想>
ちいさな電球をつけた灯りがゆっくりと広がっていく。
小四が観る世界はその灯りと盗んできた
懐中電灯の灯りだけだったのだろうか。
上映時間が約4時間でインターミッションなしと知ってから
観る勇気が出ずビビっていたけれど観てしまったら
時間はあっという間だった。
それよりも何よりも これだけの登場人物、これだけの長時間でありながら
ひとつひとつのシーンを思い出しただけで
胸がいっぱいになるほど心に残っていて
その残像は観てから時間が経てば経つほど鮮やかになっていく。
斜め上から地に差し込む柔らかい光の色気。
暗闇なのに瑞々しくて、爽やかなのに暗い泥の匂い。
静かにどこからか覗いているような、手の届かない
なんとかしたいのにどうしようも出来ない遠くから
ジクジクしながら危うい何かを眺めているようなこの気持ち・・
最初はぼんやりとしていた淡い闇がいつしか明確になっていく。
本省人と外省人、小猫王、小馬、ハニー、昼間と夜間、
かき氷、冷めた麺、腕時計、プレスリー、日本刀、
実弾がこめられていたピストル、捨てられた録音テープ、
オーデションで流す涙と苦笑い・・
「守ってあげる」と小四が言った瞬間
そのあまりにも無防備で真っ直ぐな愚かさにヒリヒリする。
対する小明は、まるで、いわさきちひろさんが描く
絵の中の少女のような透明な雰囲気がありながらも
どこか退廃的で何もかもを知っているような哀しさがある。
そうだよね、だって、彼女は世界は変わらないことを
身を持って知っているのだから。
映画の後半、その最後に向かう1時間前後に
狂気と闇が不気味みな静かさで加速していく・・
そして、絶望に辿り着いた時に思う
無駄な場面は何ひとつなかった、と。
*2017年4月の或る日、映画館で。
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