<あらすじ>
財閥と政治家の癒着は巨大な腐敗権力を作り上げていた。その一連の流れを陰で操るのが策士イ・ガンヒだった。ガンヒに雇われ様々な悪事を代行してきたアン・サングは、ある日、財閥企業ミレ自動車が大統領候補への裏金を送っていた証拠となるファイルを手に入れる。それを楯にミレ自動車を脅しさらなる成功を手に入れようと企てるがしくじり失墜する。一方、裏金事件を捜査していた検事ウ・ジャンフンは裏金ファイルをアン・サングが横取りしてしまったため、捜査は難航し打ち切りに。コネや後ろ盾のない彼はすべての責任を負わされ左遷されてしまう。しかしウ・ジャンフンは諦めきれずチンピラに成り下がりながらも復讐を企てるアン・サングを追い一発逆転の告発を持ちかけるが・・・
イ・ビョンホン、チョ・スンウ、ペク・ユンシク、イ・ギョンヨン、
チョ・ジェユン、キム・ホンパ、キム・デミョン、ペ・ソンウ 他 出演
ウ・ミンホ 監督作
<感想>
映画が始まってからしばらくの間は登場人物たちの関係性が
なかなかつかめなくて、脳みその中が混乱していたのだけれど
観ているうちに気が付くと次から次へと変化する展開に無我夢中になり
とんでもなくえげつないことの連続なのに
(しかし、なんだよ、あの宴会、アホか!腐っている!・爆)
え、そうなるのか、あの場面はそういうことか!となり、
それはまるでカンプノウの悲劇のごとくロスタイムで
うぉぉ〜!ってなる感覚のようで最後のあの場面なんかは
もう、たまらん、大好きだーーー!って、叫びたくなるという
・・いや、もう、どう記していいものか・・・(笑)
これはつまり映画の教科書として初めて『スティング』を観た時と同じ
あの気持ちとも似ていて、いわゆる、ラストのオチがわかっても、
何度も観たくなるひとつの作品としての上質さや登場人物たちの魅力や
ひとつひとつのネタのエグさなど思わず声にしたくなるものばかりで
久しぶりに映画そのものの面白さを抱かせてくれるものがありました。
「映画を撮ろう」
そんなようなセリフが何度か出てくる。
登場人物たちはあらゆる汚いことのために"映画を撮る"のだ。
「公開されたら自分が助演だったと気がつくはずだ」
さて、いったい、誰が助演だったのか、誰が主役だったのか。
口から喉が出るほど言いたいことばかり。
でも、言わない。ニヤリと笑って、心の中で味を広げ愉しもう。
あぁ、今すぐもう1回観たい!いや、何度でも再会したい!!
いっそのこと、しつこいくらい続編作ってシリーズ化してほしい(笑)
そして、なぜか、なんでもないような場面に惹きつけられる。
ウ・ジャンフンの実家の本に挟まれた狭く細い場所とか
アン・サングの食べるインスタントラーメンとか焼酎とか
ちょっとした場面がなんか好き。それはキャラクターが生きている証。
この映画の宣伝文句に使われる「最後に笑うのは誰だ?」
それはきっと、この映画に出逢えた観客なのかもしれません。
少なくともアタシは久しぶりに、それこそ、この映画の前に
夢中で観て展開に嬉しく騙された映画ってなんだったろうってくらい
そのまんま騙される快感を味わいました。
映画って、こんなに単純に面白いものだったのだという
そのシンプルな娯楽性に膝を打つ。
しかも笑えないドロドロの内容なのに笑えるという粋がある。
巧みな脚本と演出、素晴らしい演技たち、
もう、他の映画を観るのが怖いくらい。
だって、ここ何年か傑作だと思っていた映画たち
全部ぶっとんじゃったからね(笑)
初めて映画というものを好きになった時の気持ち・・
それを思う存分、思い出しました。
*2016年3月の或る日、TOHOシネマズ ららぽーと横浜にて鑑賞