やっぱり映画は映画館だよね。
*星マークが、5:感動!、4:好き!、3:キライじゃないよ、2:なんで観たのか、1:時間と金返せ

 「華麗上班族」  2015年 香港、中国

<あらすじ>
シルヴィア・チャンが脚本・演出を手がけてきた舞台をミュージカル映画化。株式公開を目前に控えた大企業で、社長、中堅社員、新入社員と様々な立場の登場人物の欲望と愛憎が渦巻く様を描く。ウォン・カーウァイ作品で知られるウィリアム・チャンによるゴージャスな美術も見所。
チョウ・ユンファ、シルヴィア・チャン、 イーソン・チャン、タン・ウェイ、
王紫逸、Lang Yueting 他 出演
ジョニー・トー 監督作



<感想>
東京フィルメックス、特別招待作品にて上映。
トーさんの良くも悪くも、あぁ、そっち系?な映画なのかな?(笑)
アタシの中で勝手にトーさんにはパターンがふたつあって
ひとつはこれぞジョニー・トーというダークなドンパチものというもの、
そうして、もうひとつは、なんかこう、、ね・・・?うん(謎笑)
実は基本的にミュージカル映画が苦手。でも、歌そのもが
魂の根源のような『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』や
今観てもダンスが楽しいアステアものなんかは大好きなのです。
なので、作品によっては結構ハマるのではというのと
ユンファ兄ぃとシルヴィア姐さん久しぶりの共演、何よりトーさんの
ミュージカルっていうのに面白みを感じて観に行きました。

観終わって思うに・・正直言うと、この映画がなぜミュージカルなのか
いまひとつわからないし、歌とかもパンチがなくて響いてこない。
でも、埋立地の上に作った都市みたいな人工的な透明なセットの中で
大きな時計が刻々と時を刻んでいったり地下鉄の駅から
そのままオフィスになっていたり視覚的には楽しかったのでした。

資本主義を皮肉った社畜ものは手垢がつきすぎていて
新しく感じるところは全然ないんだけれど、なんだか
タン・ウェイさんと一緒に思わず泣きそうになった場面があって、
アタシはそれほど彼女のファンというわけでもないし
『ラスト、コーション』の時も度胸があるなあと思ったくらいで
彼女が出ている映画だから観るとかそこまでの存在ではなかったのに
なんかこう、揺さぶられるんですよね、タン・ウェイさんが放つものに。
やっぱり、いい女優さんなのだなぁ・・と、しみじみ思う。

ラスト。再び名前を聞かれる青年、李想。
「理想の想」これを言いたかったのかもしれない。
新しい世代に潔く譲るけれど、決して忘れないでほしいものというものを
そのまま描いたらあまりにもベタなので、形を変えて挑戦してみたのかも・・
そんな風に思えてきたら、これはこれで、そんなに嫌いじゃない。
けど、ねぇ、何かが足りない、なんだろう・・って思っていたら
トーさんの映画なのに、雪ちゃんことラム・シューしゃんが出ていない!!
彼がいてどこかで何かを喰いまくってくれていたら、それだけで☆満点なのに(笑)
それにしても、ユンファ兄ぃ。出番はあまりないのだけれど
いい具合に枯れていてスラリとしてスーツも似合っていて
相変わらずカッコイイなあ。素敵でした。



*2015年11月の或る日、有楽町朝日ホールにて鑑賞




 「夏をゆく人々」  2014年 イタリア

<あらすじ>
トスカーナの人里離れた地で養蜂園を営む一家。4人姉妹の長女ジェルソミーナは、気難しい父親ウルフガングから独自の教育を受け、一家の暮らしを支えていた。ある夏の終わり、一家はひとりの少年を預かることになり、その一方でテレビ番組「不思議の国」の取材を受けることに。これをきっかけに、これまで社会と隔絶されてきた彼らの生活にささやかな変化が訪れる。そして・・
マリア・アレクサンドラ・ルング、ルイス・ウイルカ・ログローニョ、
サム・ルーウィック、アルバ・ロルヴァケル、ザビーネ・ティモテオ、
アンドレ・ヘンニック、マルガレーテ・ティーゼル、モニカ・ベルッチ 他 出演
アリーチェ・ロルヴァケル 監督作



<感想>
気がつけば淡々とやわらかい光に誘われるように
その家族たちの生活風景に観入ってしまった。
問題がおきている、深刻なものもある、不安なものもある
それらがあきらかにおきているのだけれど
それを声高にガツンと投げつけてくるのではなくて
むしろ、その行く末を控え目に見つめているだけなのに
ものすごく色濃いものが沁み渡ってくるようで。
たまたま生まれた場所が養蜂営む一家だった。
だから手伝うのが当たり前のようになってしまっていた。
そんな時にテレビの取材班。司会をつとめる女性の美しさ。
ふと、決まりきった日常の中に違う方向からふいてきた風を
ためらうことなくつかみ取るように
ジェルソミーナの中に新しい何かが生まれていく。
それは当り前だと受け入れていたことを
壊してもいいと思えた自由のようなもの。

父親は世間ずれしている人間だし
家族に対しての配慮がまるでないのだけれど
彼がラクダを買ってきてしまう場面で
その的外れさは、もう嫌になるくらいで最低なのに
彼は彼なりに娘を思っていたのだというのが
手形のように伝わってきて居心地の悪い切なさを抱いてしまった。
あのラクダは哀しい、繋がれていて、どうするのだろうと
映画が終わってからも色々思ってしまった。
そして、あの少年。触れることさえ出来ない
あまりにも繊細なあの少年はどこに行くのだろうか。

船の中でジェルソミーナを呼び彼女の前で
かぶっていたものを脱ぎ捨てた美しい司会者。
その時の夢からさめたようなジェルソミーナの表情が
遠くの波のように今も頼りなく揺れている。



*2015年11月の或る日、横浜シネマリンにて鑑賞




 「クライマーズ・ハイ」  2008年 日本

<あらすじ>
1985年8月12日、群馬県御巣鷹山にJAL123便が墜落、死者520人の大惨事が起こった。前橋にある北関東新聞社では白河社長の鶴の一声により一匹狼の遊軍記者・悠木和雅が全権デスクに任命される。そして未曽有の大事故を報道する紙面作り闘いの日々が幕を開けた。さっそく悠木は県警キャップの佐山らを事故現場へ向かわせる。そんな時、販売部の同僚で無二の親友・安西がクモ膜下出血で倒れたとの知らせが・・
堤真一、堺雅人、尾野真千子、高嶋政宏、山ア努、
遠藤憲一、田口トモロヲ、堀部圭亮、マギー、滝藤賢一、
皆川猿時、でんでん、螢雪次朗、中村育二、小澤征悦、
矢柴俊博、金子和、西田尚美、野波麻帆、樋渡真司 他 出演
原田眞人 監督作



<感想>
東京国際映画祭にて。久しぶりに再見。

チェック、ダブルチェック。
強さとは何だろう。勢いに任せて突き進むことなのでしょうか。
それとも、踏み止まることなのでしょうか。
たとえ99%正しいことでも、残りの1%に疑問がある場合
確信がない場合、はたして踏み止まれるものなのか。
「ほぼ確実」と、「絶対確実」その僅かな差は誰かにとっては
たいしたことではなく、誰かにとっては永遠にも思える差。
でも、報道とは、ジャーナリストとは、新聞の記事とは・・
確信がないもの、たとえ僅かな疑問でも無視してはいけない
スクープではなく確実な事実を紙面に載せること。
その裏とりのためのチェック、ダブルチェック。

実際に起きた事故を背景にしながら、新聞を作る人たちの
狂気にも似たその迫力に思わず観入ってしまって
いつしか、アタシもこの映画そのものに夢中になり
クライマーズ・ハイな感じになってくる。
それぞれの立場には頷けるところがあり
それでもやはり、悠木の立ち位置に思わずグっときてしまう。

「悠木さんの判断は間違っていなかった。それだけは誰よりも抜きたくて」

大スクープを目前に悠木のダブルチェックの精神は、正しかったのか
もしかしたら、単純に誤報が怖かっただけなのかもしれない。
でも、誤報が怖い、このことは大切なことな気がするのです。
だからこそ、感覚的には100%でも、裏がきちんととれていないものは
文字にしてはいけないのだ。それがジャーナリストであるし、
それは、他のことにも繋がること、すべてのことに、繋がること。
事実はひとつ。憶測や感覚だけで伝えてはいけないのだものね。



*2015年10月の或る日、新宿ピカデリーにて鑑賞




 「破風」  2015年 香港、中国

<あらすじ>
自転車ロードレースの強豪、「チーム・ラディアント」に所属するミン、ティエン、ジウォンは力を合わせ、ライバルの「チーム・ファントム」の妨害にもひるむことなく、台湾各地で連戦を繰り広げていた。やがて3人は袂を分かち、個人レースで覇を競うことになる。チームのエースだったジウォンが先行し、力をつけてきたミンが迫る。一方、復帰をめざす女性サイクリスト、シーヤオをめぐってティエンとミンは恋敵となる。そして競技は次の舞台へ・・ エディ・ポン、チェ・シウォン、ショーン・ドウ、ワン・ルオダン、
アンドリュー・リン、オーヤン・ナナ、カルロス・チャン 他 出演
ダンテ・ラム 監督作



<感想>
東京国際映画祭にて。
日本で公開未定ワールドフォーカスでの上映作品。

六本木ヒルズのものすごく大きなスクリーンで観るのにふさわしい
めちゃくちゃダイナミックでパワフルな青春映画でした。
思えば自転車レースのこと、全然知らないのだけれど
団体プレーというか駆け引きもあって、こんなに面白いものだったなんて。
挫折して、仲間と別れ、そして再び・・という王道の話。
自転車レースの魅力を演者たちが体現してくれていて、
皆いいけれど、とくにエディ・ポンさんの魅力ってば半端ない。
時々、昭和チックな恋物語が入っていて、オバちゃんには
気恥ずかしくていらない描写もあれど(謎笑)
それが気にならないくらい自転車のところは目が離せません。
というか、感想をメモろうと思ったら何も出てこないのは
あまりにも真っ直ぐな映画だったので
言葉にしたところで意味がない。とにかく、観る!しかない。
観て体感してこそ!の視覚に訴えてくる映画です。
どんなアクションよりも、どんな3Dよりも
迫力満点の青春がスクリーンの中から飛び出してくる。
ぜひ、日本でも公開してほしい。そして公開してくれるのなら
絶対に、大きな大きなスクリーンでお願いします。もう一度、観たい!



*2015年10月の或る日、TOHOシネマズ 六本木ヒルズにて鑑賞




 「カンフー・ジャングル」  2014年 香港、中国

<あらすじ>
警察の武術教官でありながら一門の名を挙げるために私的試合で殺人を犯し服役中のハーハウ・モウ。武術界チャンピオンの連続殺人事件をきっかけに、ロク警部への捜査協力と引き換えに仮釈放となり犯人を追う。ハーハウはこの犯罪の目的は恨みではなく、これからも事件は続くと断言。彼の予言通り、武術界のチャンピオンたちが自分の得意とする武術で相次いで殺害されていき・・・
ドニー・イェン、ワン・バオチャン、チャーリー・ヤン、ミシェル・バイ、
アレックス・フォン、ルイス・ファン、シー・シンユー、ユー・カン 他 出演
テディ・チャン 監督作



<感想>
本物のアクション俳優たちはどんなに危険なことをしても
身体を酷使しても観客に気がつかせない。
本物は言葉ではなく観るものを瞬時のうちに虜にする。
苦労が垣間見れてしまったら偽物なのだ。
有無も言わせず何も考えず何も気にせず
ただ目の前に繰り広げられることを心からハラハラさせ
心から楽しませてくれる、それが本物です。
そんな本物たちがこれでもかと登場する『カンフー・ジャングル』
ひさしぶりにド兄さんもので熱くなってしまいました。

香港映画やクンフーが好きとはいえ、
エンドクレジットに出てきた人たちや名を
全部知っているわけでもないのに涙が出そうになったのは
なんのてらいもない真っ直ぐな愛情を感じたからなのでした。
香港アクション映画に携わった方たちすべてへの素直な敬意。
それが劇終まで真っ直ぐ伝わってくるので目頭熱くなってしまったよ。

すべての戦い場面いいけれど、とりわけラストの
ド兄さんとバオチャンの戦いには瞬き出来ず痺れまくりで
その時だけ異様な早さで血流が体中駆け巡る思いでありました。
それにしても、このバオチャン、スゴイ!です。
今までアクション映画を支えてきた方たちに敬意をしめし
オマージュだけでも素敵だけれど、そこで立ち止まらず
勢いのある歩幅で颯爽と新しい力を観せてくれた。
活きている映画、鼓動が聴こえてくる、熱いです。
愛さずにはいられない。



*2015年10月の或る日、横浜シネマリンにて鑑賞




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