<あらすじ>
美しい山々を背に優雅に佇むヨーロッパ最高峰のグランド・ブダペストホテル。エレガントな宿泊客たちのお目当ては伝説のコンシェルジュ、グスタヴ・Hだ。彼の究極のおもてなしの秘密はマダムたちの夜のお相手も辞さない徹底したプロ意識にあった。ところがグスタヴの長年のお得意様である伯爵夫人が殺され遺言で貴重な絵画を贈られたグスタヴが容疑者にされてしまう。ヨーロッパ大陸を逃避行しながら愛弟子のベルボーイのゼロと肉親よりも固い絆を結ぶコンシェルジュの秘密結社の力を借りて謎に挑むグスタヴ。果たして自らの潔白とホテルの威信を守れるのか? 現代から60年代、そして大戦前夜の3つの時代を背景に繰り広げられる物語。
レイフ・ファインズ、トニー・レヴォロリ、F・マーレイ・エイブラハム、
マチュー・アマルリック、エイドリアン・ブロディ、ウィレム・デフォー、
ジェフ・ゴールドブラム、ハーヴェイ・カイテル、ジュード・ロウ、
ビル・マーレイ、エドワード・ノートン、シアーシャ・ローナン、
ジェイソン・シュワルツマン、レア・セドゥ、ティルダ・スウィントン、
トム・ウィルキンソン、オーウェン・ウィルソン 他 出演
ウェス・アンダーソン 監督作
<感想>
思えばウェス・アンダーソン監督の映画は
『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』しか観ていない。
でも、これがまたすごく面白かったので他の映画も気にしてはいたけれど
タイミングがあわずに『グランド・ブダペスト・ホテル』でようやく二本目。
それなのに始まった瞬間からウェス・アンダーソン監督節だと伝わってくる
その個性の楽しさ、細かいところにまで拘りがあって一瞬たりとも飽きない。
面白いなと思ったのはスタンダードになったりワイドになったりビスタになったり。
初めは、え?なんだ、なんだ?と思っていたのだけれど
その時の時代にあわせているんですね。
グスタヴ役のレイフ・ファインズさんがハマり役なのはもちろん、
すべての演者の方たちがめちゃくちゃよくて
マダムDを演じていたのがティルダ姐さんだったとは気がつかなかったし
個人的にはヘンケルス大尉役のエドっちことエドワード・ノートンさんを
スクリーンで久しぶりに観たので(DVDでは観ているのだけれど)
あの細いなで肩にあわせる衣装は縫い子さんも大変だったろう
カッコイイ、でも、アイツは怖いと思いながら観ておりました(笑)
ってか、デフォーさん、ニャンコ好きには辛いですよ!な場面があったり
指が・・って場面とか可愛らしい映像とは裏腹のブラックな場面がありつつも
全体的に、クスクスどこか笑いながら観ていたけれど
ラストに苦い薬を飲んだ気持ちになる。
信じていた世界。自分たちが価値があると思っていたもの。
それらはすべて、たったひとつの偏見や嫌悪というものが消し去ってしまう。
グスタヴが脱獄を考えてメンドルのパティシエールのアガサに
脱獄の道具入りのお菓子を作らせて差し入れさせた時に
刑務所の看守が他の差し入れは切ったりして中身をチェックするのに
メンドルの可憐なお菓子だけは切り刻むことが出来なかった場面は
どことなくその看守の気持ちというか美しいものは壊せないという
人間の単純な美意識みたいなものが働いたような気がしていたのだけれど
美しいお菓子は壊して食べてしまえばあっという間にお終い。
そして、破り捨ててしまった絵はもとにはもどらないし、失った命は生き返らない。
どんなことになろうともグスタヴは信じていたのかもしれない。
信じるというか根底にあるものを疑わなかったのかもしれない。
あの看守のように価値のあるものや好意のようなものは切り刻まないはずだと。
けれども、それは夢だった。人間はあっという間に野蛮になるのだから。
これだけ盛りだくさんで1時間40分という上映時間には脱帽。
エンドロールも手をぬかない。愛さずにはいられない映画。
*2014年8月の或る日、シネマジャック&ベティにて鑑賞