「セデック・バレ」 (2011年・台湾)
<あらすじ>
第一部:太陽旗
台湾中部の山岳地帯に住む誇り高き狩猟民族・セデック族。その一集落を統べる頭目の息子モーナ・ルダオは村の内外に勇名をとどろかせていたが1895年日清戦争で清が敗れると彼らの暮らす山奥にも日本の統治が広がり平穏な生活は奪われていく。それから35年、頭目となったモーナは依然として日々を耐え抜いていたが・・・
第二部:虹の橋
連合運動会が開かれていた霧社公学校を襲撃したセデックの決起部隊の手によって、戦う術を持たない多くの日本人は女子供の区別なく命を奪われた。日本軍は直ちに鎮圧を開始。山岳地帯の地の利を活かして戦うセデックの前に苦戦を強いられるが、圧倒的な武力を誇る日本軍と警察を前にセデックの戦士たちは一人また一人と命を落としセデックの女たちもまた選択を迫られる。そして・・
リン・チンタイ、マー・ジーシアン、安藤政信、河原さぶ、
ダーチン、 シュー・イーファン、スー・ダー、リン・ユアンジエ、ティエン・ジュン、
木村祐一、 ビビアン・スー、ランディ・ウェン、ルオ・メイリン、春田純一、田中千絵 他 出演
ウェイ・ダーション監督作
<感想>
公開時にとても観たかった反面、第一部、第二部をあわせて
4時間以上ある映画なので、時間的にも体力的にも観に行くのが難しかったけれど
CSで放映してくれたので録画して自分の時間にあわせて観てみたら
わー無理してでも映画館で観ればよかった!と後悔したくらいの大作だった。
なんかね、よく言うでしょ、台湾は日本に悪いイメージをもっていないって。
それって日本側の勝手な解釈だと改めて感じさせてもらいました。
この映画は1895年下関条約で台湾が日本統治下に置かれ
原住民セデック族が営む山岳地帯に日本が行政機関をおき彼らへ文明をおしつけ、
それが発端になり霧社事件にまでいってしまった時のことを描いています。
でも、
実話だけれど、ある意味どちらも美化することなく
映画として観せることも考えて作られたのか、その辺のアクション映画なんか
軽くぶっ飛んでしまうくらいセデック族が首を狩る場面や
山を駈け上る場面、矢を撃ち放ち、鉄砲を使う場面に心躍ってしまって
矛盾しているかもしれないのだけれど画面を観入ってしまう迫力に溢れていて。
特に主人公でもあるモーナ・ルダオが誇りを奪われながらも
いつかのために密かにマッチの先っぽの火薬を集めていたのが胸熱で
そのモーナの壮年時を演じた林慶台(リン・チンタイ)さんの面構えが
素敵なので、 もう、なんだか彼と一緒に歌い、
戦いについていきたくなってしまうという
ある意味この映画の見方を間違えているかもなアタシです(苦笑)
そうして、セデック族出身だけれど事件当時は日本の統治機構である
警察官として働き日本の名前もあった花岡一郎と花岡二郎。
本当の名前はダッキス・ノービンとダッキス・ナウイ。
彼らは最後、山の中で命を断つ。ノービンはすでに覚悟をしている妻を自ら斬り
生まれたばかりの可愛い赤ん坊の息も止め、切腹の前にナウイに言う。
「俺たちは天皇の赤子か?それともセデックの子か?」と。
そしてナウイはノービンに言う。
「葛藤を切り裂け。どちらでもない自由な魂になれ」と。
「文明を与えてやったのに」と日本は言う。
けれども、その文明って何?
もともとあった民族の誇りを奪い、勝手に押し付けた上から目線の文明。
それによって流された血はあまりにも多かった。多すぎた。
というか、本当はひとつの血も流されてはいけないのに。
かけがえのない命なのだから。
それにしても原住民族役の方たちの素晴らしさが目を惹く。
モーナ・ルダオの壮年時の林慶台さんはもちろん
青年時を演じた大慶(ダージン)さんも素敵だったし、
いつも日本の先生に罵倒され理不尽な扱いをされていた少年 バワン・ナウイを演じた
林源傑(リン・ユアンジエ)くんの体現力というか 躍動感溢れる動きには目をみはりましたね。
特にクライマックスに 大人が持つような武器を片手に猛進していくところなんか
グワっと胸をつかまされてしまった。
映画の中に桜が出てくるのだけれど、その色があまりにも紅くて。
まるで血の予告みたいに、濃くて孤独な紅だった。
CSにて鑑賞 |