ウチでゆっくり映画観るのもいいもんだよね。
*にゃんこマークが、5:永久保存、4:好き、3:キライじゃないけど上から別の映画入れちゃえ、2:早送り、1:消去

 

 「チルソクの夏」(2004年・日本)

<あらすじ>
1977年7月7日、釜山で行われた下関と釜山の親善陸上競技大会に、親友の真理、巴、玲子と共に出場した高校2年生の郁子は、同じ種目の韓国人青年・安大豪と恋をし、来年また大会で会おうと、チルソク(七夕)の約束を交わす。以来、ふたりは文通を通して絆を深め合うが、郁子の両親は韓国人との交際にいい顔をしない。それは、安の家族も同じことだった。一年後、下関で開かれた大会で安と再会を果たし大学進学と徴兵を控える彼と4年後の再会を約束して別れるのだが・・・
水谷妃里、淳評、上野樹里、桂亜沙美、三村恭代、高樹澪、山本譲二、金沢碧、
田山涼成、田村三郎、谷川真理、竹井みどり、岡本舞、イルカ、夏木マリ、
福士誠治、松本じゅん、崔哲浩、呉和貞、金銀美、金ボラ 他 出演
佐々部清 監督作


<感想>
恥ずかしながら物語の核になる俳優さんたちのことは 上野樹里さんぐらいしか知らなかったので それが逆にヨカッタのもあるのか、 ちょっと照れくさいような青春なこの映画の中に すいっと入っていくことが出来ました。 何よりもヨカッタのは陸上競技がきちんと出来る人たちを配役していたことだと思う。ここが丁寧だったのもあり、少し古臭い話でも観入ることが出来たのですよね。

それにしてもだな、まるでロミオとジュリエットのような郁子と安くんはめちゃくちゃ初々しい!だって、マフラーとか編んでいて、それもらってきちんと巻いてくれていたりして、なんだか、すげぇ、安くん可愛すぎる。あと、流しのお父さんがチンピラに殴られているのを観かけて郁子ちゃん身を挺して守るんだけど、チンピラの方たちもさすがに郁子ちゃんには手を出せないので、ある意味、彼女は最強です(笑)その時、お父さんのギター壊されちゃうんだけれど、郁子ちゃんが新聞配達のバイトでギターまで買ってあげるって、優しすぎるいい娘。お母さんは専業主婦っぽいのだけれど、流しだけでどうやって暮らしているんだろうとか色々郁子ちゃんの生活背景気になりだしたらキリがないんだけれど(笑)でも、いい意味で昭和な寂れが出ていて、味わいありました。

今でもあるけれど歴史がそうさせてきた差別や偏見の中で、そこに立ち向かうというよりは、どの時代にも人間社会には差別はあって差別をする人を変えることはできないけれど、せめて自分たちはそこの輪に入らないようにしようよ、自分の気持ちを大切にしようよというのが伝わってきて好感。ラスト、「なごり雪」の歌声が優しく響く、あの5番ゲート。あの後、2人は何を話したのだろう、懐かしい日々を思い出すのか、これからのことを話すのか、そんな想像を勝手に彼是しながらエンドロールを眺めていました。


GYAO!にて鑑賞



 

 「殺人の追憶」(2003年・韓国)

<あらすじ>
1986年、ソウル近郊の農村で若い女性の裸死体が発見された。その後も同じ手口の連続殺人事件が相次いで発生。現地には特別捜査本部が設置され、地元の刑事パク・トゥマンとソウル市警から派遣されたソ・テユンは、この難事件に挑む。性格も捜査方法も異なる二人は対立を続け何度も失敗を重ねながら、ついに有力な容疑者を捕らえるのだが・・・
ソン・ガンホ、キム・サンギョン、キム・レハ、ソン・ジェホ、
ピョン・ヒボン、パク・ノシク、パク・ヘイル、
チョン・ミソン、リュ・テホ 他 出演
ポン・ジュノ 監督作


<感想>
ラストシーンを観た瞬間、ゾクゾクが止まらなくなる。久しぶりに映画の醍醐味を味わった気持ちでいっぱい。面白かったのは最初はいい加減な捜査方法で犯人じゃない人物に罪を背負わせてしまうような強引な捜査をしていた地元のパク刑事がソウル市警から来たソ刑事と一緒に事件に向き合っていくうちに、緻密な感じになっていくんですよね。そして、逆にソ刑事は最後の方で理性を失って銃口を犯人かもしれないと疑っていた青年に向けてしまうんですよ。DNAの結果ではあの青年はシロなわけなのだから、100パーセント犯人ではないのだけれど、明らかに犯人だと思っていたので、もうね、ソ刑事の気持ちもわかるんだけれど、パク刑事がソ刑事を止めた判断は正しいんだけれど、あぁ・・もう、なんだか、だって、限りなく犯人なんじゃないかなあ、雨の日、ラジオの歌、赤い服・・なんだか、なんだか・・

絆創膏の場面とかもね、きっと、何かあるんだろうなと、わかっていながらも、やっぱり・・と哀しく空しくなる。でも、もっと空しいのは、そうだよね、まさにラストのパク刑事の顔。もしも、あの時、一番最初の捜査の時、もっと緻密に向き合っていれば、足跡を勝手につけたりといい加減な捜査をして、犯人ではない人に怖がらせて犯人だと決めつけていなければ・・・そして、もしかして、もしかして、あのトンネルの時に・・と、色んなことが思いをめぐる、恐ろしく空しいラストカット。ソン・ガンホさんの表情が忘れられない。

というか、ソ刑事役のキム・サギョンさんってホン・サンス監督の『ハハハ』の時にオモニのスープ飲んで過去の話ばかりしていた甘ったれの依存男だよね(笑)いや、全然違うねぇ。ソン・ガンホさんといいキム・サギョンさんといい、やはり韓国は俳優の質も素晴らしいなあ・・と今更ながら改めて思うのでした。


GYAO!にて鑑賞



 

 「父の初七日」(2009年・台湾)

<あらすじ>
突然の父の危篤の報せに、台北で働くアメイは故郷の病院へと駆けつけるが父は既に息を引き取っていた。母の死後、男手ひとつで自分たちを育ててくれた父の亡骸に付き添ってアメイと兄のダージは自宅へと戻る。やがて、道士でもある叔父・アイーの指図で伝統的な葬儀が執り行われることになり、従弟のシャオチュアンはその成り行きをビデオに収めることを決めるのだった・・
ワン・リーウェン、ウー・ボンフォン、チン・ジャーシャン、
チェン・タイファー、タイ・パオ 他 出演
ワン・ユーリン、エッセイ・リウ 監督作


<感想>
邦題が初七日というタイトルなので七日目のことなのかと思っていたら、そういうのではなくて、亡くなってからお葬式の時までの七日間のことらしかった。それは道教という宗教のやり方で占いで何日か決めていくらしいので、七日間でも長いのに、それ以上だったらどうなるのだろう。だって、その間中、紙銭を燃やし続けたり、泣けと言われたらご飯の途中でも、歯を磨いている途中でも泣かなければいけないんだもん、 それを真剣にやっている姿は笑ってはいけないかもだけれど、ちょっと滑稽でもあって何度もクスクスと笑ってしまう。

道教の道士でもあるアイーと彼になついているシャオチュアンの存在が印象的。アイーは詩を書いていて、標準語と台湾語だと詩の書き方そのものが違っているところとか面白かった。その詩をふたりが「運命と社会のクソったれ、オヤジでもないのに威張るな」と夜の畑の中で歌うようにテンポよく声にしながら歩いていく場面が好き。 すべてが終わり駅のホームで列車が来るのを座って待っていて、シャオチュアンがアイーの真似をしていつの間にかノートを用意して言葉を書きとめるのを眺めていたら、もしかしてジャームッシュはこの映画を観て『パターソン』を思いついたのではないかと勝手に勘ぐってしまった。

この映画の主人公的な存在でもあるアメイとお父さんとの思い出の場面がちょこちょこ描かれている。特に遺影の合成写真(この写真を作るまでのところも面白い)を彼女がバイクにのせて走っている時に通り過ぎる同じ橋の途中で、生前お父さんに粽をもらって食べたことなどが蘇る場面はとても丁寧に描かれていた。 ラストの空港の喫煙場所でアメイが急激に悲しみにおそわれる姿は、それだけ彼女にとっては素敵なお父さんだったんだなという証でもあるのだと思い、悲しみの感情の深さを思う。忘れることはなく、ふとした瞬間に湧き出てくる思いがある限り、これからもアメイの中でお父さんは生き続けるのでしょう。

終始、映像の色合いがなんというか色セロファンを覗いているような感じで、ちょこっとチープなんだけれど、それが全体をふんわりと温かく包んでいるみたいで、どことなくチグハグな音楽も含めとても可愛いらしい映画だった。


GYAO!にて鑑賞



 

 「ウォールフラワー」(2012年・アメリカ)

<あらすじ>
1991年、シャイで物静かな高校生チャーリーは、クラスメートたちに壁の花とあだ名を付けられ甘く見られていた。だが、彼の平凡な日常は、パトリックとサム兄妹との出会いによってすっかり様変わりする。チャーリーは初めて知る友情の素晴らしさや、初恋の胸のときめきに有頂天になっていたが・・
ローガン・ラーマン、エマ・ワトソン、エズラ・ミラー、メイ・ホイットマン、
ポール・ラッド、ニーナ・ドブレフ、ケイト・ウォルシュ、
ディラン・マクダーモット、メラニー・リンスキー、ジョーン・キューザック、
ジョニー・シモンズ、エリン・ウィルヘルミ 他 出演
スティーブン・チョボウスキー 監督作


<感想>
この映画を観ている時に『普通の人々』という懐かしい映画を思い出してた。あの時のティモシー・ハットンさんが演じていた青年もそうだったように、過去にうけた心の傷の影響がこの映画の主人公チャーリーにも宿っていて、周りの大人たちが腫れ物にさわるがごとくチャーリーに気を遣っている。

チャーリーは壁の花と言われるように大人しくて自分から誰にも声をかけられない青年。なので、そんな大人しい彼がアメフトの試合でパトリックに声をかけ、その妹のサムとこの三人の出会いはちょっと違和感あるものの、反面だからこそ、彼らには何か運命的なところがあったのかなとも思いながら見つめていた。

映画が進むにつれて、あのヘレン叔母さんとのことが傷になっていることがわかってくる。何かにつけて自分のことより他の人に気を遣うのも、このことが影響されている。かなり深い傷だし、きっと一生背負い続けなければいけないけれど、それでも彼方此方ぶつかりながらも生きていける・・そう思わせてくれたラストの車の場面が好き。

ポール・ラッドさん演じる国語の先生がとてもよかった。先生とチャーリーの距離感もとてもよくて、文章を読んだり書いたりすることの大切さも伝わってくる。確かに本は心の友のようなところがあるし、何かを解放するには文章を書くことも役立つと思う。チャーリーが作家に向いているのはとても良いことだと思った。それから何気にメアリーが面白い存在だった。というか彼女のことに関してはチャーリーは酷い奴だなと思ったりもしたよ、でも、まぁ、仕方ないか。

全体的に丁寧で優しい眼差しが漂うような映画。ヤク入りのブラウニー、どんな味なのか気になるところ・・です(笑)


GYAO!にて鑑賞



 

 「トム・アット・ザ・ファーム」(2013年・カナダ、フランス)

<あらすじ>
モントリオールの広告代理店で働くトムは交通事故で死んだ恋人のギョームの葬儀に出席するためにギョームの実家である農場に向かう。そこにはギョームの母親アガットとギョームの兄フランシスが二人で暮らしていた。 トムは到着してすぐギョームが生前、母親にはゲイの恋人である自分の存在を隠していたばかりかサラというガールフレンドがいると嘘をついていたことを知りショックを受ける。さらにトムはフランシスからギョームの単なる友人であると母親には嘘をつきつづけることを強要される。 恋人を救えなかった罪悪感から次第にトムは自らを農場に幽閉するかのようにフランシスの暴力と不寛容に服していく・・
グザヴィエ・ドラン、ピエール=イヴ・カルディナル、リズ・ロワ、
エヴリーヌ・ブロシュ、マニュエル・タドロス 他 出演
グザヴィエ・ドラン 監督作


<感想>
初めは死んだ恋人ギョームの面影をフランシスの姿や匂いや声に感じてしまって、正直、フランシスなんて暴力的で思い上がりで嘘つきで愛すべきところなんかひとつもない奴だけれど、ついつい離れがたくなっているだけなのか、または傷つけられて歪んだ形であっても、惹かれてしまっていたのかと思いきや、サラが現実を連れてやってきてくれた時、それまでは、なんだトムどうしたのだ、嘘をつかれていて傷つきすぎているんだねと心配モードで見つめていたので、そうか!!と目を覚ましたのでした。

振り返ってみればあの時もこの時も、あの表情や佇まいはまさにストックホルム症候群だったのかと思い、グザヴィエ・ドランさんの俳優としての魅力と、それを自分自身で監督として演出できてしまう冷静さ、照れないできちんと表現出来てしまうところ、やっぱり、スゴイ。

ラスト。アメリカ国旗をそのまま着ているようなとんでもないジャケットを着ながらトムを探すフランシス。そんなフランシスを出し抜いてようやく脱出した途中であの裂けた傷を背負って生きている青年をみかける。直視出来ずに店の女性に会計をすませながら脳裏にふと浮かぶ彼の姿に何を思ったのか。

エンドロール「自分のしたことはすべて良いことだと?」「お前は世界中に愛されそれを利用したんだ」「アメリカよ、お前には、うんざりだ」都会に戻り人々を眺めるトム。どうか、あなたの人生を正直に生きて、と背中をおしたくなってしまった。

フランシスの存在はアメリカが今までやってきたことそのものでもあると同時に個々のこと、あるいは生活そのもののことでもあるのかもしれないとも思った。アタシたちは誰でもフランシスとトムになってしまう可能性があって、 自分では気が付かないうちに自分の価値観を誰かに押し付けていないだろうか、または誰かの価値観を無理矢理押し付けられているだけでしかないのに、そのことになんの疑いもなく従ってはいないだろうか。それは結局、誰が決めたこと?本当に自分もそれでいいの? 自分はどうしたいのか、そのシンプルで当たり前のことを、この映画は伝えてくれた気がする。何度も忘れ、何度も思い出しては消えてしまうけれど、でもしっかりつかんでいなければ、自分の歩むべき人生のことを。

それにしても、 ラストの歌ですべての疑問のケリをつけられてしまって、どうしたらいいのでしょう、やられたわ(笑)


DVDにて鑑賞



 

 「ピエロがお前を嘲笑う」(2014年・ドイツ)

<あらすじ>
学校では苛められピザ屋のバイトでも馬鹿にされ想いを寄せているマリにもまともにアプローチもできないベンヤミン。そのマリのために試験問題をハッキングして手にいれようとしたベンヤミンだったが捕まってしまう。前歴がなかったため社会奉仕活動を命じられ、そこで野心家のマックスと知り合う。2人にはハッキングという共通の趣味がありマックスはベンヤミンの天才的な才能を見抜き友人たちを交えて破壊活動を行うハッカー集団“CLAY(クレイ)”を結成し国内の管理システムを手当たり次第ハッキングを仕掛け世間を混乱させ注目を集めるが・・・
トム・シリング、トリーネ・ディアホルム、エリアス・ムバレク、
ハンナー・ヘルツシュプルンク、ヴォータン・ヴィルケ・メーリング、
アントワーヌ・モノー・Jr、シュテファン・カンプヴィルト 他 出演
バラン・ボー・オダー 監督作


<感想>
「人は観たいものを観る」というのは、まさにこの監督のことなのではないだろうか。初めから最後までわざわざご丁寧に主人公のお部屋のポスターまで『ファイトクラブ』を垂れ流しながら、最後だけちょっといじって、ほら、すごいでしょ、って鼻息荒くしているんだけれど、なんか、ゴメン、オバサンすっかり白けてしまって、飽きちゃったよね。なんというか自分の好きな映画を自分用にパッチワークしただけの自己満足なものを観せられた気分でいっぱい。これ、ほんとにアメリカでリメイクされるの?されたの?なんか、それって、どうなの?(苦笑)

でも、あの、捜査官役のトリーネ・ディアホルムさんはいい感じだった。彼女が登場するだけで映像がグッとしまる。あと細かすぎて地味すぎてアメダンことsytycdのシーズン7から観ている人にしかわからないことなのですが、マックス役のエリアス・ムバレクさんがお気に入りダンサーだったロバート(『ラ・ラ・ランド』でも踊っていたのだよ)にそっくりでロバートが演じていたら、いきなりここで踊るかもなとか勝手に想像して別の形で楽しむことが出来たから、まあ、いいか(笑)


DVDにて鑑賞



 

 「マップ・トゥ・ザ・スターズ」(2014年・カナダ、アメリカ、ドイツ、フランス)

<あらすじ>
フロリダからハリウッド見物にやって来た顔にやけどの痕がある少女アガサ。ハンサムな青年ジェロームの運転するリムジンに乗ってスターたちの屋敷巡りのドライブを楽しんだ後、アガサは、近ごろ人気が落ち目気味の有名女優ハヴァナの個人秘書として働きだすことに。ハヴァナはハリウッドのセレブたち御用達の人気セラピスト、スタッフォードの顧客のひとりだったが、実はアガサはその彼のワケありの長女だった・・
ジュリアン・ムーア、ミア・ワシコウスカ、エヴァン・バード、
オリヴィア・ウィリアムズ、ジョン・キューザック、
ロバート・パティンソン、サラ・ガドン、キャリー・フッシャー 他 出演
デヴィッド・クローネンバーグ 監督作


<感想>
こういう内幕もの大好物なのですが、いやぁ、エグイねぇ。汚れまくって病みまくって腐った業界をバツーンと殴り倒しているんですけど、ひとりひとり、ひとつひとつのことがとってもリアルで。しかしジュリアン姐さんは、相変わらず曲者というか、なんでも出来る人だなと感心してしまう。 思わず人の不幸を喜んでいる場面やら、便秘トイレの場面やら、 カーセックスの後とかスゴイ。車から出ずにまたいで運転席に行け というセリフなんかあまりにも現実的すぎる(笑)

そういう意味では薬物依存症のリハビリを終えたかに見えた 子役スターのベンジー役のエヴァン・バードさんなんか、 本当にいそうな感じ(ワンコ可哀そうすぎた・泣) それにもましてアガサ役のミア・ワシコウスカさんの 風変わりな雰囲気はこの映画の心臓のようで彼女が出てくるたびに何かが起きそうで怖かった。 子供の頃から大金を手にして何でもアリな環境だもの、 大人だってあんなに変態になっちゃうんだもの、あぁなるよね、 人間は弱いから自制できないところがある。 よくも悪くも環境に流れて染まってしまう生きものだから、 平常心で生きるには感性だけではダメ、努力が必要なのかも。 誰かを傷つけたら結局はその傷は自分に返ってきてしまうのだから。

地球は広くて世界は大きくて星の輝きは山ほどあるのに 自分だけが世界の中心と思い込んで誰もが自分のことを 当たり前に知っているはずと勘違いしているセレブたち。 名声と野心と欲望まみれのぬるま湯につかったまま出ようともせずに、 ただそこに甘えて溺れている。そして、そんな人たちが作り出したものを お金を払って眺めているのはアタシたち。それも皮肉なことだ。 輝く星の中で輝くスターたちに憧れる・・という、そんな夢物語はもうとっくの昔に死んでしまっているのに、 何があそこまでそうさせてしまうのでしょう。 生死さえもわからなくなっている場所で。

「望まぬ不在の上に、むきだしの孤独に」
あのラストにした意味はなんだったのか、それも皮肉なのかしら。 いやぁ、ほっんと、エグかったです。


DVDにて鑑賞



 

 「クスクス粒の秘密」(2007年・フランス)

<あらすじ>
港町セートで暮らす60代のチュニジア移民スリマーヌは港湾労働者として働いてきたが押し寄せるリストラの波に逆らえず退職を決意。古い船を買い取って船上レストランをはじめようとするが開店パーティ当日予定していたクスクスが届かず・・
アビブ・ブファール、アフシア・エルジ、ファリダ・バンケタッシュ 他 出演
アブデラティフ・ケシシュ 監督作


<感想>
長年、真面目に働いてきたのに報われない対応をされてしまったスリマーヌ。 彼はとてもいい人だけれど、何があったのか、家族と別れ 今は恋人とその娘と一緒にいる。それでも別れた妻や家族にも会いに行き 文句を言われながらも前妻の自慢料理のクスクスを息子たちにもってきてもらい 美味しいと食べたりしている。せまい港町。どこか閉塞感もある。 そこで生きていくために子供たちの世代のために 何かを残したかったのだろうか、思い切って船を買うけれど・・

劇中何度も「あなたの人生なのよ」というセリフが出てくる。 と同時にあの乗り逃げされたバイクを追いかけている時に バイクを盗んだ少年たちが追いかけてくるスリマーヌを観て 「操り人形みたいだな」と笑う場面があって、そこに彼の人生の無情を感じてしまった。

そんな時に前妻との娘たちと今の恋人とその娘。 色んな感情がありながらも互いの立場を超えて、なんとか切り抜けようとしている船の中。 クスクスが届くまで場をもたせようと体を張って踊る恋人の娘リム役の アフシア・エルジさんのベリーダンス、すごい迫真! その場面で彼女の母は船を抜け出しクスクスを頑張って作り 鍋をかかえ船にもちこむ。その後、どうなったのか。 思えば美味しくなかったと陰口を言われていた彼女のクスクス。 でも、せめて船の中だけはハッピーになってほしいと願わずにはいられない。

というか、あの、最低なクズ野郎な息子、その奥さんの怒りと 泣き叫びの場面はもう、息が止まる思いで観入ってしまった。 彼女の叫びは、ある意味、すべての報われない真面目な人たちの叫び。 結果、最終的に美味しいクスクスを食べることができたのは 前妻が気にかけていた浮浪者の方だけだった。 そんなこんなの人生たちを大洪水のセリフたちと食べる時のクローズアップの多さの勢いで 走りきってしまった。 ある意味ちょっとドキュメントのような、映画というより舞台劇のような。 正直、前半はそのペースの繰り返しなので飽きてしまいそうになったけれど 船の場面になってからの最後のたたみかけは圧巻。 そういう意味ではかなりサスペンスな映画でもある。 それにしても、皆が乱暴に、むさぼるように、食べまくるクスクス。 なんだがたまらなく美味しそう、食べたい、今すぐに。


BSにて鑑賞



 

 「李小龍(ブルース・リー) マイブラザー」(2010年・香港)

<あらすじ>
1940年、京劇役者の父親が家族を伴ってアメリカを巡業公演中、サンフランシスコの病院で誕生したブルース・リー。その後、家族そろって香港に帰国し子役として映画に出演するようになったリーは、その一方で仲間たちとつるんで遊びやけんかに明け暮れる毎日を過ごすようになる。ある日、リーは長身の美女パールと出会い彼女に一目惚れするが自分の親友も彼女に恋していると知り恋と友情の板挟みにあって思い悩む。1973年、不朽の名作「燃えよドラゴン」の劇場公開を待たずして、32歳の若さで惜しくも急逝したリー。彼の若き日の姿を描いた青春ドラマ
アーリフ・リー、レオン・カーフェイ、クリスティ・チョン、
ジェニファー・ツェー、ハンジン・タン 他 出演
イップ・ワイマン、マンフレッド・ウォン 監督作


<感想>
実の弟さんであるロバート・リーさんが製作した映画で 李小龍がアメリカに行くまでを描いたお話。 日本占領下からイギリス領になる激動の香港の中で過ごした李小龍の 友情やケンカや恋やらなんやら彼是が爽やかで時にとても苦くて、そんな日々を温かな視点で描かれていて好感。

李小龍役のアーリフ・リーさんは今年のお正月に 『カンフー・ヨガ』を観に行った時にも思ったけれど アクロバッティでなかなか動きが素晴らしいです。 それに李小龍にとても似ている瞬間があって胸が熱くなってしまう。 エンドロールに映画でのシーンと実際の写真が流れる時があって あのダンス大会の時なんか、ほんと、本人そっくりですよね。 ボクシングの試合やその彼と個人的に戦う場面などは見応えあったし、その後の爽やかさったら青春だし幼馴染の子たちもカワイイし自転車シーンが『キッズ・リターン』よろしくな、アヘン中毒になってしまう彼との友情は哀しい。 ラスト、旅立つ後ろ姿。その走る姿を眺めていたら泣きそうになった。 クンフー映画ではないけれど、優しい青春映画になっていて これはこれでとても好きでした。


BSにて鑑賞



 

 「ザ・インタープリター」(2005年・アメリカ)

<あらすじ>
アフリカの某国に生まれ育ち、現在はNYにある国連本部で母国語のクー語の通訳として働くシルヴィア。ある日彼女は、何者かがクー語で話す会話を偶然耳にし、実はその裏に、国連本部での演説を数日後に控えた彼女の母国の独裁君主ズワーニ大統領の暗殺計画が秘められていることに気付く。彼女の通報により、トビンら、シークレットサービスの捜査官たちが、シルヴィアや大統領の警護に当たることになるのだが・・
ニコール・キッドマン、ショーン・ペン、キャサリン・キーナー、
イェスパー・クリステンセン、アール・キャメロン  他 出演
シドニー・ポラック 監督作


<感想>
主役がニコール・キッドマンさんと ショーン・ペンさんというスター映画ではあるものの、 シドニー・ポラック監督らしくいい意味で地味な 社会派娯楽映画になっていて、なかなか面白かった。

冒頭のシビアな幕開けから、不穏さが静かに漂う。 特にバスの場面とラストの緊張感は見応えがあると同時に 銃よりも声で・・という懇願のような思いが伝わってきた。 たとえそれがささやき声でも、誰かを殺すのではなく その声で、心を動かし互いに尊重しあい握手が出来たのなら・・ 言葉の力を信じたい、そうあってほしいという思いでいっぱいになる。

ショーン・ペンさんはクセのある役よりもこの映画のような ちょっと陰のある現実的な仕事人の方が素敵なんじゃないだろうか。 ニコールさんも複雑な生い立ちでありながらもひとりで必死に生きてきたという役柄が巧かったし、 そんな主人公ふたりが出逢って最後はくっつくとか そういう情けない展開になっていない作りも好感。 ただ、やはり映画の中でも世界の警察はアメリカ的なところは どうしても鼻についてしまったけれど。


BSにて鑑賞



 

 「フォックスキャッチャー」(2014年・アメリカ)

<あらすじ>
1984年ロサンゼルス五輪で金メダルに輝いたレスリング選手マーク・シュルツだがレスリングの世界では金メダリストであっても経済面で恩恵を受けられず日々の生活に困る。だが大富豪の家系の御曹司ジョン・デュポンから彼が結成したレスリングチーム“フォックスキャッチャー”に所属しないかと持ち掛けられデュポン家の豪邸に住むようになるが・・・。米国で実際に起きた衝撃的事件を映画化。
スティーヴ・カレル、チャニング・テイタム、マーク・ラファロ、
シエナ・ミラー、 ヴァネッサ・レッドグレーヴ、
アンソニー・マイケル・ホール  他 出演
ベネット・ミラー 監督作


<感想>
怖い‥容赦ない怖さ・・ 実話なのかと思うとあまりにも怖すぎる。 財産がありあまっていて生活の苦労が一切なくて 戦車さえ買えてしまう人だったデュポン。 そんな彼が欲しかったものは金メダルをとれる選手だったのだろうか。 それともお金で買われていない真の友だったのだろうか。 本人が本人のために作らせた自分を称賛してくれるウソのドキュメントをたったひとりで眺めるその姿は何も本物を手にできない孤独と狂気が 静かに不気味に息を潜めているようで恐ろしかった。

対照的な兄弟。 レスリングを頑張っているけれど傷つきやすさがあり、 どこか兄に引け目を感じて自暴自棄になりがちな弟マークと、 何の疑いもなくレスリングと妻と子供を愛し弟の親代わり的なところも含め 目の前のありのままを受け入れて正直に生きている兄デイヴ。 そんな二人は貧しい中でもレスリングをやり続け支えあってきた兄弟だった。 アマチュアで収入もままならない中で大会に出場続けるには とても過酷な日々だったはず。 そんな時に資金も練習も住むところも気にせず レスリングに集中できると知ったら誰でもそこへ行ってしまうだろう。

ふと、心に残っている場面。 次の試合の予習にと対戦相手を映像を収めたテープを持って デイヴの部屋でそれを観ようとしたマークが ちょっとしたことで不機嫌になって部屋から出ていくと、 デイヴがすぐに追いかけてマークの手からテープをとり捨て、 技の入れ方をすぐに教えているところ。形から入っていくマークと 率直でありのままでいることのできるデイヴ。その対照的なふたりが デュポンの狂気の罠にハマってしまった運命を思うと、あまりにも皮肉。 この映画はここがそうだったからとか、あれがそうだったからとか、 断定的なことは描いていない。だからこそ、怖かった。 あまりにも静かで、あまりにも闇が深すぎて・・

主役の三人の演技が、素晴らしかった。 デュポンの不気味な孤独を終始漂わせていたステーヴ・カレルさんの怪演。 才能がありながらも傷つきやすくて
不安定なマークを演じるチャニング・テイタムさんの好演。 そして、いつも手のひらにマークの電話番号を記していたり、 子供たちへの愛を手に記しているようなデイヴを演じていた マーク・ラファロさんの人間味溢れる温度・・ 彼の手のKIDという文字が映された瞬間、行き場のない哀しみにおそわれる。なぜ、こんなことに。あまりにも恐ろしくてやりきれない。


BSにて鑑賞



 

 「君の名は。」(2016年・日本)

<あらすじ>
1000年ぶりという彗星の接近が1カ月後に迫ったある日、山深い田舎町に暮らす女子高生の宮水三葉は、自分が東京の男子高校生になった夢を見る。日頃から田舎の小さな町に窮屈し、都会に憧れを抱いていた三葉は、夢の中で都会を満喫する。一方、東京で暮らす男子高校生の立花瀧も、行ったこともない山奥の町で自分が女子高生になっている夢を見ていた。心と身体が入れ替わる現象が続き、互いの存在を知った瀧と三葉だったが、やがて彼らは意外な真実を知ることになる。
神木隆之介、上白石萌音、長澤まさみ、市原悦子 他 声の出演
新海誠 監督作


<感想>
岩井俊二監督の映画をアニメにしたらこんな感じ?っていうくらいの キラキラした逆光気味の瑞々しい画の数々はいい感じだけれど・・ アニメ映画は苦手なものの、ロングランで上映され 多くの評価がされていたのでそれだけの力のある映画なのだと思い 自分でもかなり期待しすぎてしまったのがいけなかったのか、 同じような設定だったら『転校生』の方が人間描写も深くて 面白かったなあ、と 他の映画を思い出してしまうほど かなりシラケながら見つめてしまった。

それでも、時空の設定とかは面白いと思った瞬間があって なんで入れかわっているのに今の自分たちのおかれている状況を あっという間に信じていられるの?って突っ込みながら観ていたら ある場面で、あぁ、なるほど、そうだったのかって思える場面があって 観始めて数分でこの映画から離れていた心が、 その場面でちょこっと戻ったのね。 けど、戻ったのはそこだけ。 結果、あのラストシーンには失笑してしまった。 もう少し大人も耐えられるような内容に出来なかったのだろうか、 あれだけの画力があるというのにもったいない気がしてしまう。

本当に画は美しいんですよ、テレビで観てもあれだけ美しいので 映画館で観たら、めちゃくちゃキレイでしょうね。 その画力と口噛み酒(飲みたくない・笑)は印象に残りました。 というか、この映画の地上波放送、かなり気合が入っていたみたいで CMもすべて映画にまつわるような内容だったんですよね。 わざわざこの放送のためだけに作っているような。 その中で、新海監督が作った塾を題材にしたようなCMが流れて、 むしろ本編よりも、こっちの方が印象に残りました。


地上波にて鑑賞



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