ウチでゆっくり映画観るのもいいもんだよね。
*にゃんこマークが、5:永久保存、4:大好き、3:キライじゃないけれど上から別の映画入れちゃえ、2:早送り、1:消去

 

 「ある海辺の詩人、小さなヴェニスで」(2011年・イタリア、フランス)

<あらすじ>
中国に残した息子をいつか呼び寄せることを願いつつ、ラグーナに浮かぶ美しい町キオッジャの小さな酒場で働くシュン・リー。そこで、仲間に「詩人」と呼ばれる東欧出身の老漁師ベーピと知り合う。ふたりは故郷や家族の話を通して異国からやって来た孤独を分かち合い次第にお互いが大切な存在となっていくが・・
チャオ・タオ、ラデ・シェルベッジア、マルコ・パオリーニ、
ロベルト・シトラン、ジュゼッペ・バッティストン 他 出演
アンドレア・セグレ 監督作


<感想>
ふたりが心を開く繊細な雰囲気は
この映画の中に出てきた蓮の花の蝋燭の灯のようで
いつか、ロウソクの灯が消えるのと同じく
壊されてしまいそうなこのふたりを
どうか優しく見守ってあげてほしいと願いながらも
終わりはやってきてしまう。
この淡々とした雨上がりの曇り空のようなリズム。
送り先のわからない心のこもった手紙と想いは
ようやく読むべきひとのところで息をする。
彼女の願いを大切にしてくれ叶えてくれたベーピ。
ある海辺の詩人、小さなヴェニスで。タイトルを思わず口にした。
涙が出てきた。切ない、切ないです。


CSにて鑑賞



 

 「チョコレートドーナツ」(2012年・アメリカ)

<あらすじ>
1979年、カリフォルニア。シンガーを夢見ながらもショーダンサーで日銭を稼ぐルディ。正義を信じながらも、ゲイであることを隠して生きる弁護士のポール。母の愛情を受けずに育ったダウン症の少年・マルコ。世界の片隅で3人は出会った。そして、ルディとポールは愛し合いマルコとともに幸せな家庭を築き始めるが・・
アラン・カミング、ギャレット・ディラハント、アイザック・レイヴァ、
フランシス・フィッシャー、ジェイミー・アン・オールマン 他 出演
トラヴィス・ファイン 監督作


<感想>
夜道を彷徨うマルコのまあるい後ろ姿が脳裏から離れない。
彼はハッピーエンドが好きだったから、
ずっと信じていたのでしょう。ルディとポールが迎えに来る時を。
三人は家族だった。紛れもなく。悔しい、哀しい。
この映画のもつキャンディを包む紙のような
そういう優しい眼差しが逆に哀しさを倍増させる。
マルコ、ごめんね、ごめんね、
みんなアナタを見つけてあげられなかったね・・


CSにて鑑賞



 

 「百円の恋」(2014年・日本)

<あらすじ>
実家でひきこもり生活を送る32歳の一子は、離婚して出戻ってきた妹とケンカしてしまい、やけになって一人暮らしを始める。100円ショップで深夜勤務の職にありついた一子は、その帰り道に通るボクシングジムで寡黙に練習を続ける中年ボクサーの狩野と出会い、恋をする。しかし幸せも長くは続かず、そんな日々の中で一子は自らもボクシングを始めるが・・
安藤サクラ、新井浩文、稲川実代子、早織、宇野祥平、根岸季衣 他 出演
武正晴 監督作


<感想>
一子がトレーニングし出して身体が出来あがっていく場面から
ようやく映画が動き出して生きもののように走り出してくれた感じです。
「一度でいいから勝ってみたかった」
どんなに頑張って本気出しても勝てないところが
いい意味で予定通りな感じで安心しつつも、
今一つ腹にこないこの感じはなんだろう。
とはいえ、この映画の心臓はサクラさんの演技なのでしょう。
やはり、一子が変化していく過程に説得力があるからこそ
彼女が映る場面はつい観入ってしまったのだから。
そして、期限切れの弁当をもらいにくる根岸さんが昔の
SABU監督の映画に出てきそうなキャラで地味にツボでした(謎笑)


CSにて鑑賞



 

 「コーヒーをめぐる冒険」(2012年・ドイツ)

<あらすじ>
2年前に大学を辞めたことを父に秘密にしたまま、考える日々を送っている青年ニコ。恋人の家でコーヒーを飲みそこねた朝、車の免許が停止になった。アパートでは上階に住むオヤジに絡まれ気分直しに親友マッツェと出かけることに。すると、クサい芝居の売れっ子俳優、ニコに片想いしていた同級生ユリカ、ナチス政権下を生き抜いた老人等々、ニコの行く先々でひとクセある人たちが次々と現れて・・
トム・シリング、マルク・ホーゼマン、フリデリーケ・ケンプター、
カタリーナ・シュットラー、ユストゥス・フォン・ドホナーニ 他 出演
ヤン・オーレ・ゲルスター 監督作


<感想>
なかなかコーヒーにありつけないイマイチで憂鬱な日。
一見甘ったれてふらついているよう観えるニコは、
何かわからない違和感というものを抱えている。
ジャズと、モノクロ、戦争は過去ではないことなど、
そういうことも思わせてくれた朝、ようやく飲めたコーヒー
また一日がぼんやりと始まる。でも昨日とは違う。きっと違う日。
ただニコの行動を追いかけているだけなのに感じ入るものがあり
どこか懐かしいものもあり、終わってみれば、なかなか好き、この映画。


CSにて鑑賞



 

 「愛、アムール」(2012年・フランス、ドイツ、オーストリア)

<あらすじ>
夫ジョルジュと妻アンヌ。パリ都心部の風格あるアパルトマンに暮らす彼らは、ともに音楽家の老夫妻。その日、ふたりはアンヌの愛弟子のピアニスト、アレクサンドルの演奏会へ赴き、満ちたりた一夜を過ごしたのだった。 翌日、いつものように朝食を摂っている最中、アンヌに小さな異変が起こる。突然、人形のように動きを止めた彼女の症状は、病による発作であることが判明。手術を受けるも失敗に終わり、アンヌの体は不自由に。そして・・
ジャン=ルイ・トランティ二ャン、エマニュエル・リヴァ、
イザベル・ユペール、アレクサンドル・タロー 他 出演
ミヒャエル・ハネケ 監督作


<感想>
びっくりした。 こんなに観やすいハネケ監督の映画って・・どうよ?(笑)
って思ったのも束の間あの結末は例えば似たような最後の
『ベティ・ブルー』や『カッコーの巣の上で』だったら
哀しいけれど観方によってはハッピーエンドという捉え方も出来るのに
この映画では、そう思えない苦い余韻が残る。
窓から入ってきた鳩。最初は逃がしてやるのに
二度目は絞め殺してしまう。アンナへのそれと同じように。
でも、日記には嘘を書く。逃がしてやったと。
死が現実から解放されて自由になる(逃がした)ようにも思えて。
愛していたのは、そのままの人だったのだろうか
目の前で生きていた長年一緒にいた、愛していたはずだった。
鍵をかけ、遮断していたものは、ひとつだけ空いていた窓は・・
そんなことを色々思っていると、一見、ハネケ監督にしては優しい映画に観えつつ
この静かに淡々と締め付けるような緊張感はなんだろう・・
やはり、彼が生む映画はすべて、ハッピーなことはない。決して。


CSにて鑑賞



 

 「ラッシュ/プライドと友情」(2013年・アメリカ、ドイツ、イギリス)

<あらすじ>
性格もレーススタイルも相反するF1レーサー、ニキ・ラウダとジェームス・ハントが激しい首位争いを繰り広げていた1976年。ランキング1位だったラウダはドイツ大会で大事故に遭遇し、深いけがを負う。復活は無理だと思われたがわずか6週間でレースに復帰する・・・
ダニエル・ブリュール、クリス・ヘムズワース、
オリヴィア・ワイルド、アレクサンドラ・マリア・ラーラ、
ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、デヴィッド・カルダー 他 出演
ロン・ハワード 監督作


<感想>
実はニキ・ラウダとジェームズ・ハントの物語・・
と、言われても全然ピンとこなかった。
でも、F1が好きだったこともあり漠然と観てみたのでした。
時にはスタッフに煙たがられながらも
マシンの製造にも細かくかかわっていく。
もちろん天才なのだけれど熱心さが地に足がついているので
その真面目さが風変わりな感じに映るのが面白かったニキ・ラウダ。
後半の復帰までの壮絶なリハビリの頑張りも本当の話だと思うと
ただ、ただ、スゴイ。生きることがレースそのものだったのでしょう。
反面、ジェームズ・ハントはモテモテで
ちょっぴりヤンチャな魅力ありで、思いのほかいい奴で、自由で・・
そういう人が逝ってしまうのも早すぎて・・・

そして、雨の富士スピードウェイ。その場面を眺めながら
そんなレースが実際にあったのだと思いつつ
もしかしたら、アタシはF1が好きというよりも
セナが好きだったんだなという事実に気がついてしまった。
この映画を観て思う。自分がニキ・ラウダや
ジェームズ・ハントが好きで思いれがあればよかったのに、と。
そうしたら、こんなモヤモヤな気持ちにならなかったのに。
だって、思い出してしまったのだもの・・あの哀しい5月を。


CSにて鑑賞



 

 「孤独な天使たち」(2012年・イタリア)

<あらすじ>
思春期まっただなかの14歳の少年、ロレンツォ。孤独を愛する風変わりな彼は、学校のスキー合宿に参加する、と両親には偽って、自分の住むアパートの地下室にひそかに潜り込み、そこで自分ひとり、自由気ままに1週間を過ごす計画を立てていた。ところがその地下室へ、長らく会っていなかった異母姉のオリヴィアが思いがけず転がり込んできたことから、ロレンツォはすっかり腹を立てる一方、次第に彼女に心惹かれるようになる。そして・・
ヤコポ・オルモ・アンティノーリ、テア・ファルコ、ソニア・ベルガマスコ、
ヴェロニカ・ラザール、トンマーゾ・ラーニョ 他 出演
ベルナルド・ベルトルッチ 監督作


<感想>
こんなに瑞々しいなんて思いもよらなかったから一瞬戸惑う、
『ラスト・タンゴ・イン・パリ』『シェルタリング・スカイ』・・
ベルナルド・ベルトルッチ監督だよね?
あぁ、だけれど『シャンドライの恋』を観た時にも
今日と同じ気持ちを感じたのだ。彼はいつも前を観ているのだ。
新しい綺麗な水を泳ぐ人なのだ。決して過ぎ去りし濁っていく
過去の栄光の名残の水を泳いだりしない。 だから常に瑞々しい。

秘密の地下室。小さな自由を手に入れた内気な少年、ロレンツォ。
好きな音楽、食べもの、そして、ありんこ。
彼が炭酸入りの飲み物を力いっぱいふった後、
ばーっと部屋にまき散らすのかと思いきや、
そのあふれるものがこぼれないようにそっと栓をあけ唇にあて
飲んでいる仕草を眺めていたら、なぜか涙が出そうになった。
小さな冒険を繊細に優しく見つめているこの映画が愛しくなる。
その秘密基地に異母姉のオリヴィアが飛びこんでくる。
ヘロイン中毒だったオリヴィア。最初は反発しあっていたふたり。
でも、いつしか互いの鼓動が重なりあうような優しい空間が漂う。

オリヴィアはロレンツォに言う
「もう隠れるのはやめて、たまに打ちのめされるけれど平気だよ」と。
そして、彼女もヘロインをやめることを約束する。
最後の日、ロレンツォはオリヴィアが置いていくつもりだった煙草の箱を
忘れものだと思い渡す。 戸惑いながら受けとるオリヴィア。
その中には、つい我慢出来ずに買ってしまったヘロインがはいっている。
そのことはロレンツォは知らない。

地下から抜け出し、それぞれの居場所へ帰るふたり。
「楽しかったね」そう言って笑顔で別れた。
殻を破りどこへでも飛んで行ける小さな羽を手に入れたように
ロレンツォの顔はキラキラしていた。もう、大丈夫だよね。
でも、オリヴィアはどうなるのだろう。それを思うと切ない。

繊細な光と影。儚さと優しさが不規則に心に沁みる。
きっと、何度も再会したくなる、そんな映画だった。
それにしても、イタリア語のデビット・ボウイの歌声、色っぽい!


CSにて鑑賞



 

 「罪の手ざわり」(2013年・中国、日本)

<あらすじ>
重慶で家族への仕送りを続ける若き父チョウは妻と子には出稼ぎだと偽って強盗を繰り返していた。会社の汚職により14年間、利益を吸い上げられてきた山西省の炭鉱夫ダーハイは、その怒りを抑えることができなかった。叶わぬ恋を続け寄る辺ないまま歳を重ねてきた湖北省の女・シャオユーは、しつこく迫る客に我慢できず切りつける。"何か"を手に入れたくて、職を転々とする広東省の若者・シャオホイはナイトクラブのダンサーとの恋に苦悩する・・。 中国で実際に起きた事件を基に犯罪に手を出してしまった4人の男女の姿を描いた作品。
チャオ・タオ、チアン・ウー、ワン・バオキアン、ルオ・ランシャン 他 出演
ジャ・ジャンクー 監督作


<感想>
救いがないという以前にこの映画の 冷たい静かさが怖かった。
確かにこれまでのジャ・ジャンクー監督の映画も
乾いていて、そこが好きだったのだけれど、
この映画は乾いているという以前に異様に冷たかった。

最後に出てきた青年は、問題が起きると逃げてばかりで
怪我させたこと、働くことから逃げなければ
何か解決策がありそうなのに 自分で行き場をなくしてしまい
え・・と思う間もなく窓から身を投げてしまった。
出稼ぎといい家族に仕送りをしてくれていた男は
平然と強盗をして、平然と殺人を犯していた。
風俗の受付で働く女はたちの悪い客に何度もせまられ
札ビラでたたかれついには我慢の限界で殺人を犯してしまう。
一番最初に出てきた男は炭坑で働く真面目そうな男だった。
でも、村の利益をとりあげている金持ちになった幼馴染に腹を立て
最後は皆殺しのごとく次々と射殺していく。

でも、あの馬は撃たれなかった。 立てなくなっても鞭で打たれ続けた馬。
男は鞭で打つ人間を撃ち殺し、馬を自由にした。
観終わった後、その馬が彼方此方歩いていた場面を思いながら
ぼんやりと映像が脳裏に浮かんでは消えていった。

なんといったらいいのかわからない後味に途方に暮れる。
あまりにも躊躇なく撃ち殺していた。何の罪のない人たちも
許せない人たちも、同じ音で、同じ血の色で死んでいく。
これを映像にする意味を思う。
痛みや渇きさえも感じないこの骨の髄まで冷たい映画を
どうやって受けとめたらいいのだろう、と。


CSにて鑑賞



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