「孤独な天使たち」 (2012年・イタリア)
<あらすじ>
思春期まっただなかの14歳の少年、ロレンツォ。孤独を愛する風変わりな彼は、学校のスキー合宿に参加する、と両親には偽って、自分の住むアパートの地下室にひそかに潜り込み、そこで自分ひとり、自由気ままに1週間を過ごす計画を立てていた。ところがその地下室へ、長らく会っていなかった異母姉のオリヴィアが思いがけず転がり込んできたことから、ロレンツォはすっかり腹を立てる一方、次第に彼女に心惹かれるようになる。そして・・
ヤコポ・オルモ・アンティノーリ、テア・ファルコ、ソニア・ベルガマスコ、
ヴェロニカ・ラザール、トンマーゾ・ラーニョ 他 出演
ベルナルド・ベルトルッチ 監督作
<感想>
こんなに瑞々しいなんて思いもよらなかったから一瞬戸惑う、
『ラスト・タンゴ・イン・パリ』『シェルタリング・スカイ』・・
ベルナルド・ベルトルッチ監督だよね?
あぁ、だけれど『シャンドライの恋』を観た時にも
今日と同じ気持ちを感じたのだ。彼はいつも前を観ているのだ。
新しい綺麗な水を泳ぐ人なのだ。決して過ぎ去りし濁っていく
過去の栄光の名残の水を泳いだりしない。
だから常に瑞々しい。
秘密の地下室。小さな自由を手に入れた内気な少年、ロレンツォ。
好きな音楽、食べもの、そして、ありんこ。
彼が炭酸入りの飲み物を力いっぱいふった後、
ばーっと部屋にまき散らすのかと思いきや、
そのあふれるものがこぼれないようにそっと栓をあけ唇にあて
飲んでいる仕草を眺めていたら、なぜか涙が出そうになった。
小さな冒険を繊細に優しく見つめているこの映画が愛しくなる。
その秘密基地に異母姉のオリヴィアが飛びこんでくる。
ヘロイン中毒だったオリヴィア。最初は反発しあっていたふたり。
でも、いつしか互いの鼓動が重なりあうような優しい空間が漂う。
オリヴィアはロレンツォに言う
「もう隠れるのはやめて、たまに打ちのめされるけれど平気だよ」と。
そして、彼女もヘロインをやめることを約束する。
最後の日、ロレンツォはオリヴィアが置いていくつもりだった煙草の箱を
忘れものだと思い渡す。
戸惑いながら受けとるオリヴィア。
その中には、つい我慢出来ずに買ってしまったヘロインがはいっている。
そのことはロレンツォは知らない。
地下から抜け出し、それぞれの居場所へ帰るふたり。
「楽しかったね」そう言って笑顔で別れた。
殻を破りどこへでも飛んで行ける小さな羽を手に入れたように
ロレンツォの顔はキラキラしていた。もう、大丈夫だよね。
でも、オリヴィアはどうなるのだろう。それを思うと切ない。
繊細な光と影。儚さと優しさが不規則に心に沁みる。
きっと、何度も再会したくなる、そんな映画だった。
それにしても、イタリア語のデビット・ボウイの歌声、色っぽい!
CSにて鑑賞 |